琥珀色の戯言

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【読書感想】キミのお金はどこに消えるのか 令和サバイバル編 ☆☆☆


Kindle版もあります。

内容紹介
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ついにきた消費税増税? 老後に必要な預金は2000万円? 将来不安になる前に、お金の基本がわかります!
不動産投資、保険、給料、バーゲンセール、貯金……などなど、身近なところから経済に迫る! 消費税10%時代をどう生き延びるのか? 日本の経済政策は失敗の象徴? 豊かで幸福な生活を送るために、お金のことをもっと知る! ――『中国嫁日記』の著者が贈る、かなり本気の経済マンガ。電子書籍特典版として、アベノミクスに関する漫画(noteに掲載)と、イラストを収録。


 『中国嫁日記』の井上純一さんが、いま、日本が直面している経済問題についてマンガで解説した『キミのお金はどこへ着るのか』の続編です。
 僕は前作は未読だったのですが、読むまでは、「経済の基本」についてわかりやすく語られた本だと思っていたんですよ。
 読んでみると、それなりにわかりやすくはあるのだけれど、「経済学」というよりは、いまの日本の経済政策についての著者(あるいは監修者)の主張が書かれているところが多い印象でした。
 
 読んでいて、「確かにそういう考えかたもある」し、消費税の増税が、消費の冷え込みの原因となり、必ずしも税収のアップにつながらない、ということなどは、他の経済学者の本でも読みました。
 とはいえ、この本に書かれていることを鵜呑みにするのもどうか、と思うんですよ。
 著者も、「考えるきっかけになればいい」というスタンスではあるみたいなのですが。

 経済学の世界では、本当にいろんな考え方をする人がいて、絶対的な正解というのがいまだ存在しないから、みんなが苦労し、試行錯誤しているのです。

 
 「ちゃんと経済成長をしている国」中国では、不動産の価値がどんどん上がっていくのが当たり前。
 そして、いま成長している国々は「日本の失敗に学んでいる」から、そう簡単に日本の二の舞にはならない。

 消費が上がらないと……生産性は上がりません

 「生産性」を上げるためには、「作業効率」を考える以前に、「その生産したものを消費できる力があること」が大前提なのです。

 それを考えると、「LGBTは生産性がない」というのは間違いで、人というのは、生きて、経済活動をしているだけで(あるいは、食べたり服を着たりしているだけで)、生産性の向上に寄与している、とも言えるのですよね。
 
 「日本人みんながよりお金を使えるようにする」というのは、なかなか難しい。
 「お金を使っても、また稼げるさ」と思っていれば、多くの人は積極的にお金を使って人生を楽しみ、経済活動全体も活発化していきます。
 今のように、「お金が足りない」という雰囲気が蔓延していると、「節約しなきゃ」ということで消費が冷え込み、景気も悪くなるから、給料も上がらない。給料が上がらないと、やっぱり「お金が足りない」という危機感が増し……という、まさに悪循環。
 僕はバブル崩壊後の「失われた20年」を生きてきたのですが、正直、なにが理由で日本が世界の経済成長から取り残されてしまったのか、よくわからないのです。
 競争を避け、既得権益を守ろうという力が強すぎたのか、日本人が勤勉だった、というのが噓だったのか、経済政策が間違っていたのか、人口が増えなくなったのが原因なのか……
 「僕らは、前の世代の(高度成長期の)人々に比べて、そんなに劣っているのだろうか?」と嘆きたくもなる。
 
 この本のなかで、マルサスの『人口論』を題材に、「どんなに頭のいい人も未来を見透すことはできない」ということが述べられています。
 僕が子どもの頃(1970年代〜80年代前半)、地球の人口はどんどん増えていって、近い将来、深刻な食糧危機が起こってくる、というのが「定説」でした。だから、宇宙への移住を考えなければ、と主張する人も多かったのです。思えば、『機動戦士ガンダム』も、あの時代だからこそ、なのかも。
 ところが、いまも地球の人口は増え続けているとはいえ、その増加のスピードは緩やかになってきており、日本をはじめとする先進国では、少子化、人口減少が大きな問題となっています。
 いまは人口がどんどん増えているアジアやアフリカの国々も、遠からず、人口減のフェーズに入っていくのです。
 家系を繋ぐことや子孫を遺すことよりも、教育にかかるコストへの懸念や自分自身の人生を充実させる生き方を選ぶ人々の増加など、人類は、自らの意思で「減っていくこと」を選ぼうとしています。
 

 だから……もうやめよう
 人口論とか財政的幼児虐待とか ありもしない未来のために現在を犠牲にすることを!!!
 だって、未来は誰にも分からないんだから!!!

 
 昔よりも、いろんな予想の精度は上がっているはずです。
 でも、僕が子どもの頃に、2019年がこんな世界になるなんて、予想できていた人は、たぶん、誰もいなかったと思う。
 そうであるならば、「将来のこと」を気にしすぎて、今を犠牲にするのは、確かに「意味がない」のかもしれません。
 もう少しみんな楽観的になれれば、消費も上向くのでしょうけど。
 まあでも、自分だけ『アリとキリギリス』のキリギリスにはなりたくない、という気持ちもわかる。僕もそう思うから。

 最後に。歴史的な理由で「国(政府)は信用できない」と考える人は多いという話をしました。そういう人たちは、可能な限り子供の教育にお金をつぎ込むそうです。なぜなら教育の結果は、他の財産(土地や貨幣や宝石など)と違って個人から収奪することは困難だからです。
 ですから、日本政府の財政破綻が心配なら優先して教育と医療にはお金を掛けるといいでしょう。私たちの子孫が、十分な教育を受け、健康で、世界のどこに行っても稼ぐ力を持っていれば、例え国の財政が破綻しても生きていけるからです。


 これは本当に箴言だと思います。
 日本は「お金がない」というのならなおさら、もっと教育にお金を使えばいいのに。それは間違いなく「生産性」の向上につながるはずだから。

 いろいろツッコミどころもあるし、「わかりやすい極論」じゃないと売れないのだろうな、と思いつつも、考えさせられるところも多い本でした。


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