琥珀色の戯言

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【映画感想】キングダム ☆☆☆☆

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あらすじ
紀元前245年、中華西方の国・秦。戦災で親を失くした少年・信(山崎賢人)と漂(吉沢亮)は、大将軍になる夢を抱きながら剣術の特訓に明け暮れていた。やがて漂は王宮へと召し上げられるが、王の弟・成キョウ(本郷奏多)が仕掛けたクーデターによる戦いで致命傷を負う。息を引き取る寸前の漂から渡された地図を頼りにある小屋へと向かった信は、そこで王座を追われた漂とうり二つの王・エイ政(吉沢亮)と対面。漂が彼の身代わりとなって殺されたのを知った信は、その後エイ政と共に王座を奪還するために戦うことになる。


kingdom-the-movie.jp


2019年、映画館での8作目。
平日の朝いちばんの回で、観客は30人くらいでした。

この映画の予告編を最初にみたときには、「映画『進撃の巨人』の香りがする……」と思ったし、原作のスケールを映画化するのは、邦画では予算的にも難しいのではないか、と予想していたのです。
でも、けっこうよくできていたんですよね。とくに、キャラクターの再現性が高かったのが大きいのではなかろうか。
ただ、今回の映画では、描く範囲を限定したために、そんなにお金がかからず、人が大勢出てこない状況にして、うまくやった、という感じもするのです。
どこに行ったんだよ8万人の兵。
さらに、死んでも死んでもよみがえる山の民。この人たち、『ロード・オブ・ザ・リング』だったら、間違いなく悪役のはず。
あんな人間離れした敵たちにやられまくって、なんで死なないのか、観ていてなんだか不公平な感じさえしてきました。
この映画だけでみると、『キングダム』は「夢」とかでいろんな人が動いてしまい、敵の大軍に対して、少人数での斬り込みで勝負が決するという、ありがちなファンタジーアクション映画になってしまっているとも思うのです。

王都奪還作戦は、その前の山の民との関係も含めて、「そんなにうまくいくわけないだろ」というものだし、いくらなんでも王の周りの守りが薄すぎる。あのタイミングで同盟とか言ってくる連中は、どうみても胡散臭いし。あんなヤケみたいな作戦をやるのなら、呂不韋のところに行って、庇護を求めるか、遠征軍の指揮権を奪ってしまうほうが、まだ勝ち目がありそうではないか。あるいは他国に亡命するとか。
歴史的な両者の関係を考えると、呂不韋はこの時点では、まだ秦王をそんなに邪険にはできないはずだし……とか、あれこれツッコミを入れたくなってしまうのが、中国史好きのカルマみたいなものなのだろうなあ。
でも、やっぱり面白い映画ではあるし、大沢たかおさんの王騎の不気味なんだけど器の大きさを感じさせるたたずまいなど、キャスティングも良かったと思う。信は、なんか騒がしいチンピラ感がぬぐえなかったが、物静かなキャラクターが多いだけに、あえてそういう役割になっているのかもしれない。

というか、ストーリーが「ありがちなアクション映画」になってしまっているのを、原作を尊重したキャラクターたち(+もともとの役者の魅力を活かしつつ、とにかく原作に「寄せて」いたように思う)と、ちょっと食傷気味になるくらいの濃いアクションシーンで、うまく『キングダム』らしさとこの映画の個性を出している、と考えるべきなのだろう。


僕はこれまでずっと、始皇帝の「中華統一」という行為を「巨大な野心や功名心によるもの」だと解釈していた。
もちろん、そういう一面もあるのは間違いないが、あらためて考えると、始皇帝の発想は、当時としては「異様」なものだったはずだ。
それまでの中国の「常識」としては、秦・斉・趙・楚などの諸王国があり、あくまでも諸王国が存在するのが大前提で、それぞれ国の内部での権力争いがあり、国どうしが覇権を競っていたのだ。
そんななかで、秦・斉・趙・楚・魏・韓・燕の「国境」をなくすというのは、たしかに、ずっと続いてきた、国どうしの争いをなくす、ということでもあるのだよなあ。
統一の過程では大きな犠牲が出るのは間違いないけれど、「統一によって、長い目でみれば犠牲者を減らすことにつながる」可能性は高い。
だが、始皇帝が現れるまで、あの大陸で、本気でそんなことをやろうとした王は、存在しなかったのだ。というか、そんなことができるとは、誰も思っていなかったのだろう。
『キングダム』では、始皇帝の母親が卑しい出自であることで、弟から軽蔑されている場面があるのだが、むしろ、そういう出自だからこそ、始皇帝は「秦という国にとらわれない発想」ができたようにも思う。
「それぞれの国の伝統的な名家出身の貴族たち」は、「自分の家、国」へのこだわりが強くて、その枠組みを壊すことはできない。
巨大帝国をつくることが「世の中のため」であり「社会福祉」なのかどうかは、よくわからない。ただ、あの時代の中華では、あまりにも長い七国の争いへの疲れから、それが求められる機運が生まれてきており、それを形にしたのが始皇帝だったのではなかろうか。
始皇帝と秦の政治には、さまざまな残酷なエピソードが残されているけれど(その多くは、のちの政権によって、より悪く書かれたものである可能性も高いが)、そこまでやったからこそ、「中華統一」が成し遂げられた、とも考えられる。
いずれにしても、始皇帝の頭の中なんて、僕には想像もつかない話ではあるのだけれども。

「夢」とかでキラキラした話にされているように思っていた『キングダム』で、いちばん大きな夢をみていたのは、「大将軍になる!」と息巻いている信ではなく、リアリストにみえる秦王だったのかもしれない。


キングダム 1 (ヤングジャンプコミックス)

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映画「キングダム」オリジナル・サウンドトラック

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