- 作者: 小野?征志
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2019/03/16
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
- 作者: 小野塚征志
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2019/03/22
- メディア: Kindle版
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内容紹介
■ヤマト運輸での労働問題発覚以降、「物流危機」はホットトピックになっている。実際、トラックドライバーの高齢化や倉庫作業員の不足は顕著であり、「経済の血脈」である物流がいつ止まってもおかしくない状況にある。
一方で、宅配ロボットやドローンといった先進技術の活用も徐々に広がりつつある。Amazonのように、倉庫作業のロボティクス化やAIによる需要予測といった先駆的な取り組みを進めることで、競争力の更なる向上を実現している企業も存在する。■これら、足元での労働環境の悪化やAmazonをはじめとする先進プレイヤーの動向といったミクロな事実を紹介する書籍や記事は増えてきたが、「物流の未来」がどのようなものであるかや、経営・経済においてどのような役割を果たすようになるのかまでを見通したものはない。
本書は、ロジスティクスの最先端動向に精通し、コンサルティング、セミナーなどで活躍する著者が、技術革新の先にある物流ビジネスの「破壊と創造」を解説するものである。省人化・標準化が進むことで、サプライチェーン全体の最適化に向けたオープンプラットフォームが生まれつつあること、コト売りへの転換を果たそうとするメーカーがシェアリングビジネスに進出していることなど、技術・インフラ・サービスの進化の方向性を明らかにしている。物流会社だけではなく、荷主やメーカーにとってのビジネスチャンスも見つけられる内容である。■「ロジスティクス4.0」は、著者が講演やコンサルティングなどで使ってきた用語だが、その用語や考え方がそのまま「国土交通白書」や「ものづくり白書」で用いられるなど、一般用語化している。
宅配業者や長距離トラックの運転手など、「物流」に関する仕事での人手不足は、多くの人に知られるようになりました。
「送ったものが、確実に届く」というのが日本の物流だったのですが、ネット通販の荷物の増加や、不在時の再配達の負担、きつい仕事のわりに報酬がすごく高いわけでもない、という労働条件から、危機が叫ばれるようになっているのです。
その一方で、AI(人工知能)や作業用ロボットを用いての効率化やドローンの試用など、テクノロジーも進化してきており、ただ人を増やせばいいのか(近い将来、人はそんなに要らなくなるのではないか)とも思われます。
著者は「ロジスティクス4.0」をこんなふうに説明しています。
本書にて紹介する「ロジスティクス4.0」とは、物流の世界において現下進みつつある新たなイノベーションです。IoT、AI、ロボティクスといった次世代テクノロジーの進化と、活用の拡大は、ロジスティクスの根幹を変えようとしています。「省人化」と「標準化」による「物流の装置産業化」が起きつつあるのです。
「ロジスティクス4.0」の本質は「脱労働集約」にあります。人的リソースに依存しないビジネスモデルに変わろうとしているのです。その非連続な変化の先にある未来をいち早く創造できれば、次なるGAFAとなることも可能でしょう。GAFAを構成する、グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)の4社は、ITの進化を見据えたビジネスモデルを先んじて構築し、現在の支配的地位を得ることに成功しました。ロジスティクスの世界でも、かつてのITの進化に匹敵する変化が生じようとしているのです。自動運転トラックの実証実験は世界各地で実施されています。ロボットやドローンを目にする機会も増えました。荷主と物流リソースをマッチングするビジネスも大きく成長しようとしています。「脱労働集約」の実現は、遠い未来の出来事ではないのです。
これはこれで、「人が要らない社会が近づいてくるのではないか」というのと、ロジスティクスに関しても、AmazonやGoogleはいちはやく注目してさまざまな実験をしているので、彼らに追い付き、追い越すのは大変だろうな、とも思うのですが。
逆に、GAFA自体は君臨しつづけても、業務の内容が全く違ったものになる、という可能性もあります。
現在のAmazonで大きな収益をあげているのが、ネット通販ではなく、AWS(Amazon Web Services)となっているように。
ちなみに、ロジスティクス1.0は「輸送の機械化」、2.0は荷役の自動化、3.0は「管理・処理のシステム化」と定義されています。
ロジスティクスは、どんどん人の手がいらなくなり、効率化されているのです。
ロジスティクス4.0による省人化によって、最も大きな変革がもたらされる物流プロセスはトラック輸送です。国内の貨物輸送に占めるトラックの分担率はトンベースで90%超、トン数に輸送距離を乗じてその仕事量を表したトンキロベースでも50%を超えます。そして、人件費が高い日本では、トラック輸送に要する運送費0%近くをドライバーの人件費が占めます。つまり、自動運転の実現は、物流のコスト構造に多大なインパクトをもたらすわけです。
世界最大のトラックメーカーであるダイムラー(Daimler)は、2025年までの実用化を目標に、自動運転トラックの開発に取り組んでいます。2015年に公開された自動運転トラック”フレイトライナー・インスピレーション(Freightliner Inspiration)”は、交通量の多い高速道路を時速80キロで自動走行できます。既に欧州と米国の公道で試験走行を開始しており、その模様はメディアにも公開されています。
自動運転トラックの実用化に向けた取り組みは、ダイムラーだけではなく、ボルボ(Volvo)やスカニア(Scania)、日系の日野自動車やいすゞ自動車も力を入れています。現在では、商用車メーカーのみならず、テスラ(Tesla)やウェイモ(Waymo)といったテック系のメーカーも自動運転トラックの試験走行を開始するに至りました。
自動運転なんて、まだまだ先の話だろう、と思っていたのですが、早ければ、あと5年くらいで、自動運転トラックが実現する可能性があるのです。
著者は、「完全に自動運転だけで物流を維持する」のは、すぐには難しいので、ある程度人間のサポートを必要とするだろう、とも述べていますが。
しかしながら、高速道路での部分的な自動運転であっても、物流のコスト構造に相応のインパクトを与えることは間違いありません。長距離トラックのドライバーを「長時間運転」という重労働から解放できるからです。走行中に寝ることも、会社から指示を受けることも、副業をすることも可能になります。特定の区間、「ただトラックに乗っているだけ」のアルバイト的なドライバーが増えるかもしれません。結果として、トラックドライバーの人件費は確実下がります。
個々の労働者として考えると、仕事はラクになるし、自由な時間も増えるけれど、仕事は減るし、給料も下がる、というのは、はたして良いことなのかどうか疑問ではあります。
それでも、この流れを押しとどめていくことは、もう難しいですよね。効率化できた企業が「勝ち組」になっていくでしょうし。
さらに、消費者のニーズをあらかじめ予測し、それに合った商品を準備する、ということも行われるようになってきています。
注文される前に、その客さんが買いそうなものを、あらかじめ近くに準備しておくのです。
アマゾンは、ユーザーの情報をマーケティングに活かすことにも積極的です。スマートスピーカー”アマゾン・エコー(Amazon Echo)”は、人工知能”アレクサ(Alexa)”を搭載しており、音楽の再生だけではなく、メッセージの送信、天気予報の確認、レストランの検索、家電製品の操作、アマゾンでの買い物といった様々な機能を提供していますが、ユーザーの情報を入手するための端末としての側面もあります。アマゾン・エコーが設置されていれば、その音声情報や登録データを通じて、住所、家族構成、家にある家電製品、好きな音楽・食事、普段よく見ているテレビ番組、最近の話題った多様なユーザー情報を入手できるからです。アマゾン・エコーの普及を通じて、住環境や家族構成に応じた戦略的なプロモーション、商品・サービスの垣根を越えたタイアップ、テレビの前にいる視聴者の属性に応じたCMの入替なども可能になるわけです。そう考えると、アマゾン・エコーは、消費者の家の中での行動を見える化し、マーケティングに活かすことのできるデマンドチェーン系のプラットフォームと捉えるべきなのかもしれません。
こういうのは、「なんだか見張られているみたいで、気持ち悪い」のですが、使ってみると便利なのは間違いないので、結局、多くの人が受け入れていくと思われます。
便利さと安さを拒絶するのは、本当に難しいから。
米国の3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)事業者であるジェンコ(GENCO)/現フェデックス・サプライチェーン(FedEx Supply Chain)も「物流+商流」で自社ならではの価値を提供しているプレイヤーです。同社は、返品されたものを回収し、必要に応じて返金処理を行うとともに、通常商品やアウトレット商品として再販売可能なものを選別した上で、再梱包・再出荷する、リバース・ロジスティクスをコアビジネスとしています。元々はその作業を代行するだけでしたが、現在では返品されたものを買い取るサービスも提供しています。荷主からすれば、再販売の手間を解消できるだけではなく、早期に資金を回収できます。他方、ジェンコからすると、安値で買い取り、高値で販売すれば、物流サービスを提供しただけのときよりも多くの利益を得られます。リバース・ロジスティクスの最大手であり、返品されたもののマーケットプライスを一番よく知っているジェンコであればこそのビジネスモデルといえるでしょう。
ジェンコは、2015年に大手物流会社のフェデックス(FedEx)に買収され、買い取った商品を中国などの新興国で売るようになったそうです。
人間というのは、いろんなアイデアを思いつくものだな、と感心せずにはいられません。
現時点では、人は「モノ」を食べなければ生きていけないし、デジタルデータで送れないものは、人の手に届けるしかないのです。
そんな「制限」のなかで、未来の物流は、どこまで行くのだろうか。
- 作者: 湯浅和夫
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2014/04/11
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- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2019/02/21
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物流ビジネス最前線?ネット通販、宅配便、ラストマイルの攻防? (光文社新書)
- 作者: 齊藤実
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2016/08/12
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