琥珀色の戯言

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【読書感想】ぼく、街金やってます: 悲しくもおかしい多重債務者の現実 ☆☆☆


Kindle版もあります。

ぼく、街金やってます

ぼく、街金やってます

内容紹介
東京・池袋で街金を営む著者のもとには、さまざまな多重債務者がやってくる。そして返すあてもないまま借金を重ねていく。そんな彼らの、悲しくも爆笑せずにはいられないさまざまなエピソードを面白おかしく、しかし赤裸々に、街金ならではの視点で紹介。
ほかにも、ブローカー、詐欺師、悪徳業者、反社など、日常生活では出会うことのない人々が続々登場。今まであまり語られることのなかった街金コラムも満載。あなたの知らないお金の世界が見えてくる!


 「街金」というと、僕には『ナニワ金融道』のイメージが強いのです。
 これまでの人生では、幸いなことに街金からお金を借りる機会はなかったのですが、身内や銀行が貸してくれない状況で、そんな高利の借金をしても返せるわけないのに……と思うのです。
 それでも、なかなか諦めきれないのが人間というものであり、今度こそ、もう少しでうまくいくのではないか、と考えてしまいがちなものではあるのでしょう。
 以前、ファミコンで『魔界村』というゲームソフトをつくった会社が、カセットをたくさんつくる資金がなくて、銀行からの融資も難しく、思い切って街金(のようなところ)からお金を借りてチャンスを活かし、大儲けをした、という伝説を聞いたことがあります。
 金利が高くても、審査が緩めで早く貸してくれるというのは、借りる側にとってメリットが大きい場合もあるのです。
 最終的には、なんらかの方法で回収できているからこそ、街金だってやっていけるのでしょうし。

 はじめまして。
 池袋北口の風俗ビルに入居する街金ではたらいているテツクルです。
 投資家たちから年利10%でお金を借りて、債務者に15%で貸しています。
 まず、街金を誤解している人が多いので、説明させてください。
 街金と闇金はまったくベツモノです。
 国や都道府県に貸金業者として登録して、強烈な監視の下でお金を貸しているのが街金です。
 街金は、法律で定められた金利の範囲でお金を貸しています。
 範囲といっても、上限いっぱいですが。
 取立ても当然ルールの範囲内でやっています。
 いまは、夜中に取立てしたり「おいこら! 内臓(自粛)とか脅したり、勤務先に取立てに行ったり、家族から取立てたり、これぜんぶアウトです。
 街金はルールをギリギリ守り、法定金利の上限ギリギリで貸しています。街金はギリギリセーフなんです。
 だから、街金を闇金とごっちゃいにされるのは心外です。闇金が「ワシ街金王!」とか言うからややこしくなるんです。

 銀行やノンバンクから借りられない人に貸すのが街金、急な資金需要にも対応するのが街金、債務者との距離感がとても近いのが街金です。
 街金は、債務者の資金繰りに口出ししたりします。
 回収をスムーズにする目的が大半ですが、債務者の再起の可能性を模索しながらアドバイスすることもあります。


 ちなみに、著者が働いていいる街金では、年間100~150人の多重債務者に融資をしていて、創業以来貸し倒れゼロなのだそうです。
 貸している相手を考えると、これはすごい。
 すごいけど……どうやって回収しているのか、想像がつかない(というか、想像すると怖い)ところもありますね。違法な手段は使っていないそうですが。


 街金にお金を借りてくる人にも、いろんなタイプがいるのだなあ、ということがわかります。
 典型的な「経営している会社が苦しくなって……」とかいうケースは書かれていないのでしょうけど、借りる側も海千山千というか、懲りないというか、金銭感覚や社会常識がマヒしているような人がいるんですね。
 そして、そういう人のいかにも怪しい口車に乗せられてしまう人もいるのです。

 ぼくに、面白い案件を持ってきてくれるおじさんがいます。
 解体家さんなんですが、解体だけでは食べていけないようで、いろいろとアンテナを張っていて、ぼくに案件を紹介してくれます。
 儲けが大きいんだけど、大元につながっていない案件とか。
 人が何人も介在していて、途中で話が変わってしまっている案件とか。
 暇つぶしには最高ですが、信用して取引先に紹介してしまったりすると僕が恥をかきます。

「テツクルさん、新宿のど真ん中で表面利回り3%の物件買う人いませんか、500億なんですけど」
「おまえいまから来いよ。ゲンコツくれてやるから」
「いやいや! こんどは本当なんですよ! タイの王族の末裔の人に紹介してもらったんですから!」
「どうでもいいけど、遅れてる利息2万持ってすぐ来いよ」
「すいません、いま5000円しか持ってなくて……」
「てかおまえ、なんでタイの王族と知り合いなんだよ」
「ぼくの友だちがAKBの関係者で、その知り合いがタイから衣料品購入してて、そのつながりです」
「なんで不動産屋がひとりもいないんだよ……」
「で、資金証明が必要なんですけど」
「500億円の?」
「500億の」
Photoshopでつくればいい?」
「最悪、それで」
 タイの王族の末裔の紹介で新宿の不動産の売り情報を得て、知り合いにAKB関係者が登場して、Photoshopで偽造した資金証明書ではじまる商談。
 もう、なんなの。

 この手のおじさんたちが持ってくる案件をツイートすると、多くの不動産クラスタの方々の共感を得られます。「でたwww」「それ知ってるwww」って感じで。
 また、おじさんたちは有名物件(事件がらみとか、権利関係が複雑で誰もまとめられない物件とか)も、「おれならまとめられる。おれしかまとめられない」と言います。本人はまとめられると思ってるから余計タチが悪いんです。

 
 偽造書類をつかまされそうになることもあるし、反社会的勢力を連れてくる人もいる。同業者との回収競争も激しい。
 ときには、明らかに騙されていそうな人を目の当たりにすることもある。
 街金やってるのもラクじゃないよなあ、と思うのです。
 本当に困っている人、すぐにお金が必要な人が借りられる、そして、闇金ほど手荒な真似はしない街金には、資本主義社会での「役割」みたいなものがあるのでしょう。
 銀行は晴れた日に傘を貸そうとし、雨が降ったらとりあげる、なんて言葉もありますし。


 著者は、こう仰っています。

 もし、あなたが街金から借りなければならない状態に陥ってしまっても、利息の支払いに不安があるなら、やめてください。
 換金できるものを片っ端から現金にかえて、自己破産してください。
 街金からお金を借りたら、苦しみが倍増するだけです。中途半端に踏み入るとすべて失います。家族も友だちも仕事も失うかもしれません。

 こういうことが「頭ではわかっている」人は、けっこういるんじゃないかと思うのです。
 ところが、自分がその立場に置かれてみると、自己破産というような「最終的な解決策」をなんとか先送りして、自分の日常を引き延ばそうとしてしまうのです。
 
 街金に縁がない人にとっては興味深い本だと思います。
 本当は、街金でお金を借りるかどうか迷っている人にこそ、前述のメッセージが伝わると良いのでしょうけど。


ナニワ金融道 1

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