- 作者: 若竹七海
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2018/08/03
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
女探偵・葉村晶は尾行していた老女・石和梅子と青沼ミツエの喧嘩に巻き込まれる。ミツエの持つ古い木造アパートに移り住むことになった晶に、交通事故で重傷を負い、記憶を失ったミツエの孫ヒロトは、なぜ自分がその場所にいたのか調べてほしいと依頼する―。大人気、タフで不運な女探偵・葉村晶シリーズ。
仕事はできるが不運すぎる女探偵・葉村晶のシリーズ最新作。『このミステリーがすごい!』でも3位にランクインして、相変わらずの存在感を示しています。
葉村さんの仕事ぶりを読んでいると、探偵って、こんな仕事なんだなあ、というのがわかったような気がしてくるんですよ。
独身・中年でやたらと肉体的な責め苦を受けている葉村さんって、最初の頃は、「中年女性で、有能な探偵である」ということそのものが「個性」だったのに、今の世の中では、「ああ、こういうふうに自立して生活している女性って、世の中に少なからずいるのだろうな」という感じですよね。
葉村さんが変わったわけではなく、世の中が、葉村さんに追いついてきた、と言うべきか。
今回の事件では、調査中に高齢女性同士の喧嘩に巻き込まれただけのはずだったのに、いつのまにか「当事者」になっていくのですが、さまざまなところに伏線が張り巡らされていて、それが見事に回収されていく、叙述トリック的なものに頼らない、正攻法のミステリです。
「他人の話を自分のものにする」という「エピソード泥棒」の話など、一筋縄ではいかない人間たちの描写も印象的でした。
生来の嘘つきとか、あまりにも話を盛り過ぎてしまう人というのは、読者が謎解きをしようと試みるタイプのミステリに関しては、望ましくい登場人物ではあるのですが、現実には、そういう人って、けっこう大勢いるんですよね。
これからは、「嘘を嘘と見抜けない人には読めないミステリ」みたいなものもたくさん出てくるのではなかろうか。
「ミステリ専門本屋付属の探偵社ってことは、本のことも調べてくれんの? オレさ、子どものことに読んだ本で、もう一度読んでみたいけどタイトルとか思い出せないのがあるんだよ。夏休みに金貸しが殺されて、緑色のズボンとパン屋が出てくるやつ。警部さんが食べる、焼きたてのクリームパンがうまそうだったんだよなあ」
わたしは児童書の棚から、岩波少年文庫の『カッレくんの冒険』を取り出してカウンターの上に置いた。ヒロトは松葉杖を立てかけ、本を開いた。パラパラとめくって少し読み、ああ、これだ、と言った。
「もっとでかい本だったような気がしてたけど、すげー、よくわかったね」
いや簡単すぎる。リンドグレーンのカッレくんシリーズは、児童ミステリの基本中の基本だ。それにハードカバーの「でかい本」もある。
そうか、これは「簡単すぎる」のか……
古今のミステリへの蘊蓄が、相変わらず詰まっているのは、このシリーズの読みどころのひとつです。
僕の場合は、毎回、「もう少し自分がミステリに詳しかったら、二重、三重にこのシリーズを楽しめるのだろうけど」と、少しだけ悲しくなる部分でもあります。
もちろん、ミステリマニアじゃなくても十分に楽しめる作品ですし、前作よりも、さらに読みやすくなったような気がします。
「久しぶりに『ミステリ』を読みたくなったのだけれど、肩肘張らずに読めて、先が気になって夜更かししてしまうような本はない?」
そんな要望に、過不足なく応えてくれる作品だと思います。
- 作者: 若竹七海
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