琥珀色の戯言

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【読書感想】声優ラジオ“愛"史 声優とラジオの50年 ☆☆☆☆

声優ラジオ“愛"史 声優とラジオの50年

声優ラジオ“愛"史 声優とラジオの50年

内容(「BOOK」データベースより)
アニラジはこうして作られた!第1次声優ブームの深夜ラジオ、大阪発の元祖アニラジ、90年代アニラジバブル、WEBラジオの誕生、そして現在―。当事者の証言から紐解くラジオと声優の50年史!


 書店で見かけて衝動買いしてしまったのですが、あらためて考えてみると、僕はラジオが大好きだった(というか、1970〜80年代の若者の多くは、『オールナイトニッポン』などの深夜ラジオのリスナーでした)けれども、声優さんがパーソナリティの番組とか、「アニラジ」と呼ばれるものを好んで聴いていたわけではないんですよね。というか、ほとんど聴いていなかったのです。
 そんな僕にとっては、はじめて知るような話がほとんどだったのですが、それでも、興味深く読むことができました。
 この本の著者も「もともと声優好き、アニメ好き、というわけではなくて、ラジオ好きから、『声優がやっているラジオ番組』に関わるようになっていった」そうです。
 「声優」というジャンルの人たちが、どのようにしてラジオに居場所をつくっていったのか、地上波からWEBラジオへの移り変わりなども含めて、当時の「裏方さん」たちへの取材を通じて検証されているのです。
 声優さんよりも構成作家やプロデューサー、アニラジ雑誌の編集者などの話がほとんどなので、パーソナリティとして活躍した声優さんたちへのインタビューを期待するとがっかりするかもしれませんが、個々の声優さんのファンではない、というのが、かえって、「声優とラジオの半世紀の歴史の流れ」を概観するのには奏効しているように思われます。
 それまで「キャラクターに声をあてる仕事」であり、「キャラクターのイメージを壊さないために、自分の言葉で喋ることが敬遠されがちだった」声優さんたちが、なぜ「ラジオ」に進出していくことになったのか?
 あらためて考えてみれば、「声がいい」というのは、ラジオでは大きな武器になるのですが、昔の声優は「演技」を求められる一方で、当意即妙の受け答え、みたいなものをトレーニングされる機会はほとんどなかったわけです。もっとも、昔は「声優専業」という人はほとんどいなくて、役者がアルバイト的に声優をやっている、ということが多かったそうですが。

 冒頭に、日高のり子さんのインタビューが収録されているのですが、僕は日高さんが笑福亭鶴光さんのオールナイトニッポンにアシスタントとして出演したときに、アイドルだった日高さんのことをはじめて知ったのです。日高のり子さん、坂上とし恵さん、浜田朱里さんの三人が「がけっぷちトリオ」として、鶴光さんにさんざんイジられ、エロトークにも参加していたんですよね。
 日高さんにとって、あれは「黒歴史」だったのではないか、と思っていたのですが、インタビューのなかで、日高さんは、鶴光さんの番組で多くのことを学んだ、と仰っています。

「鶴光さんとラジオをやっていたと言うと、『シモネタが多くて大変だったでしょ?』と皆さんおっしゃるんですけど、鶴光さんはシモネタを交えながらも、リスナーから届いたお便りを自分から紹介しつつ、オチの前後にSEを付けたりして、一連の流れが1つのネタになっていたんです。ハガキを元に、鶴光さんのリアクションと音楽がついて、1つのコントみたいになっていたというか。私も面白いなと思っていたんですけど、結局、話の運び方を鶴光さんの形で覚えたみたいなんですね。だから、自分もトークする時はオチを付けたがるところがあるんです」
 鶴光から「ラジオは耳だけを使う想像力の世界。どれだけ聴いている人たちに想像してもらえるかが面白さのポイントなんだ」という話もされたことがある。表面的なシモネタではなく、スタッフへの指示や話の運び方などの裏側を見たことが、のちの日高の番組作りの基礎になった。
 その後、悪戦苦闘が続いたアイドル活動と並行して、84年から声優に活躍の場を広げ、翌85年に『タッチ』の浅倉南役を射止める。先輩たちの厳しい演技指導を潜り抜け、声優としても確固たる地位を築いていった。


 あの『崖っぷちトリオ』の日高さんが、浅倉南?と、けっこう驚いた記憶があるんですよね。
 日高さんは、ラジオのパーソナリティとしても長く活躍されているのですが、「シモネタでいじられてかわいそう」に見えた時期の『オールナイトニッポン』での経験が、結果的には大きかったのです。

 
 この本を読むと、「声優のラジオ」をつくってきた人には「普通のラジオ番組として完成されたものを目指したい」と、オープニングからエンディングまでいっぺんに録音し、編集なしで流せるものを目指すタイプと、パーソナリティに自由にしゃべってもらって、その面白いところを使って番組をつくるタイプがいたこともわかります。

 1990年代のラジオ大阪アニラジをスタッフとして引っ張っていたディレクターの佐藤卓矢さんについて、ラジオ大阪で長年制作に携わってきた兼田健一郎さんは、こんな話をされています。

 おたっきぃ佐々木の項でも書いたが、ラジオ大阪の歴史を振り返るにあたり、ディレクターの佐藤卓矢に触れないわけにはいかないだろう。90年代、ラジオ大阪アニラジをスタッフとしてけん引していたのが佐藤であることは間違いない。
 國府田マリ子と二人三脚で『GM』を人気番組に押し上げ、『瞳と光央の爆発ラジオ』などほかの番組も手掛けていた。岩田も佐藤の薫陶を受けている。『声優ラジオの時間シングル』(綜合図書)のインタビューによれば、佐藤から「岩田さんが声優としてどれだけの実績があって、人気があるのか、僕は知らないです。そんなことはどうでもよくて、僕は1人のパーソナリティとして岩田さんを扱っていきます。1人のパーソナリティとして扱うというのはどういうことかと言うと、1人で生放送をできるような状態にすることです」と最初に言われたという。では、兼田から見た佐藤はどんな男だったのだろう。
「彼は北海道の田舎で育ったから、楽しいことがラジオぐらいだったんでしょうね。ラジオをやりたい一心でこっちに来て、業界に潜り込んで。自分で『國府田マリ子のGM』の企画書を書いてコナミに持ち込んだわけだから、情熱はあるし、”ラジオはかくあるべし”という気持ちがメチャクチャ強かったんです。完パケにこだわりがあって、絶対録り直しはしないし、作家もつけないという。だから、普通のラジオたらんとしたんでしょうね。声優である前にラジオパーソナリティだという」
 ラジオ大阪に確かな爪跡を残したのは疑いようがない。しかし、佐藤が業界を去る前からアニラジ界は大きく変化した。WEBラジオが広がり、のちに動画付きの番組も誕生。佐藤が愛するラジオの形からは大きく離れていく。
「あの当時はラジオがキッチリできればそれでよかったんだけど、今のラジオは、ラジオであってラジオじゃない。メイクをしてます、カメラで動画を録ってます、メールを読みます、あれもします、これもしますというのが1つのコンテンツの中に複合しているわけだから、すべてを声優に任せるんじゃなく、水先案内人がいないとしんどいですよね。こうなってくると、ラジオ道を追求したってしょうがない。もちろん基本は大事。基本があって、そこからどれだけズレているのかわかってないといけない。だから、音だけのラジオ番組に対する向き合い方としては、それはそれで正しいとは思うけれど、今はテクノロジーの進歩によって、土台からズレてるから、もし彼が今もラジオのディレクターを続けていたら、悩んでいたか、もしくはそこから自分を変えられなくて、スポイルされていたかもしれないですね」


 自分が聴いてきた「ラジオ」に思い入れが強ければ強いほど、時代の変化を受け入れがたいところはあるのでしょうね。
 それは、「ラジオ」に限ったことではなくて。

 この本で多くの声優やディレクター、番組関係者が語っている「ラジオ番組を成功させる秘訣」には、昔も今も、共通したところがあるのです。

 2012年発売の『声優ラジオの時間』のインタビューで、「ラジオパーソナリティに必要なスキル」を問われた時の林原(めぐみ)の返答を紹介しよう。彼女のラジオに対する姿勢の一端が感じられる。
「受け売りじゃないこと、かな。自分で見聞きして感じたことを話す。頭に来たことは『頭に来た』、面白かったことは『面白かった』と。誰にでもできることですけど、私はそういうパーソナリティが好きです。音楽にめちゃめちゃ詳しいとか話題が偏っていても、その話題を好きな人が聴けばいいと思います。ただ、そのパーソナリティが本当に思ってることをしゃべってるのかどうかは、たぶん伝わるんじゃないかな」


 パーソナリティが「本当に思っていること」を喋っていること。
 多くの人が、ラジオでは、これが一番大切なことだと語っていたのが、すごく印象に残りました。
 これは、半世紀前に声優がラジオに進出してきたときから、いや、ラジオにパーソナリティという存在が生まれたときから、変わっていないようです。
 林原さんは「誰にでもできること」だと仰っていますが、自分のイメージを守りたいという気持ちや、批判されることへの怖さなどもあり、実際にそれをやるのは、簡単なことではありません。
 僕は声優ラジオには疎遠だったのですが、「仕事の合間にでも、またラジオを聴いてみようかな」と思っています。


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