琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

【映画感想】ゴジラvsコング ☆☆☆

f:id:fujipon:20210707151507j:plain

あらすじ
モンスターたちの戦いの後、特務機関モナークが巨大怪獣(タイタン)の故郷(ルーツ)の手掛かりを探る中、深海からゴジラが再び現れる。世界の危機を前にゴジラが暴れまわる原因を見いだせない人類は、キングコングを髑髏島(スカルアイランド)から連れ出し、ゴジラと対決させようとする。

godzilla-movie.jp


 2021年、映画館での7作目です。
 平日の夕方からの回で、お客さんは10人くらいでした。
 
 『キングコング対ゴジラ』には、日本のゴジラシリーズの第3作として1962年に公開された作品があるのです。



 1962年には生まれておらず、『マジンガーZグレートマジンガー』とかで、「VS」ってついているけど、こういう主役級どうしが対決する作品では、どっちかがきちんと勝つ、みたいなことはない、というのを学んできた僕は、「まあ、でっかいのが暴れるのを見られればいいか」と思いつつチケットを買ったのです。今から考えれば、でかいのが暴れるのが観たければ『エヴァ』をもう1回観るべきだったのかも……

 猪木VS馬場が実現しなかったように、「看板を背負った者」どうしが、完全に決着をつける、というのは難しいものなのです。
 「どっちが勝つのだろう?」というよりは「どうやって、どちらのキャラクターも傷つかないような決着をつけるのだろう?」という黒い楽しみもあったんですよね。
 あらためて考えてみると、スポーツでは、こういう「世紀の対決」でも、1ラウンドであっさりKO、みたいな結末もあるのですよね。「まだ上映開始から1時間くらいだから、決着つかないだろう」みたいな映画の観かたをしてしまう大人に、ならぬつもりがなってしまいました。

 この映画、正直、あんまり褒めるところがないというか、観ていてけっこう眠かった。画面では大怪獣が闘っている場面でも、途中から見飽きてきたのです。
 お前、怪獣映画に向いてねえよ、という話なのかもしれませんが、飛び道具がないコングVS放射能火炎があるけれど、基本的には格闘型のゴジラが延々と殴り合っているのを延々と見せられると、「ああ、これまだ続くの……?」って気分になってきます。フィクションだと、現実のような予想外のKOとかはありえないですしね。
 そして、主役級の負けられない2人(?)が共演するとなると、闘いも、ほぼ互角になってしまう。

 僕はこの映画を観ながら、『シン・ゴジラ』のことを思い出していたのです。
 『シン・ゴジラ』のなかで、僕がいちばん好きで、惹きこまれたシーンは、ゴジラが圧倒的な力で街を破壊し尽くす場面だったんですよ。あの神々しい強さ!美しさ!
 現実であんな目には遭いたくないものですが、日常で絶対にできない体験ができる、絶望感を味わえる、というのが、『シン・ゴジラ』の圧倒的な力の描写だったのです。やっぱり、庵野秀明という人は凄かった。

 僕が「怪獣」、とくに『ゴジラ』に求めているのは、同じくらいの力のライバルとの接戦じゃなくて、人々を絶望させる、圧倒的な破壊神としての存在感なんですよ。
 そんな「怪獣」だからこそ、倒す、もしくは鎮めるということに工夫やドラマが生まれてくるわけで。
 この『ゴジラvsコング』には、ゴジラの「強さ」にゾクゾクさせられる場面がまったくありませんでした。
 あらためて考えてみると、日本の『ゴジラ』の後期の「人間の味方になったゴジラ」はこんな感じだったのかもしれませんが……

 この映画では、さすがにわざとらしい両者リングアウトにするわけにはいかないので、もうひとつの要素を加えて、主役たちが傷つかないようにしているのです。
 結局のところ、怪獣たちはどうせ決着がつかない中途半端な格闘を延々と続け、登場人物は無理な設定を実現するために理不尽で御都合主義な行動を取り続けるという、締まりのない映画になっています。場面が次々に切り替わるのだけれど、どれも意味がよくわからないし、面白くもないし、登場人物が印象に残らないのです。
 いや、小栗旬さんだけは、「あの小栗旬でも、ハリウッド映画に出るとなると、こんなキワモノ役をやらされちゃうのか……それを考えると、渡辺謙とか菊地凛子ってすごいんだな……」という大きな気づきを僕にもたらしてくれました。
 小栗旬さん、『罪の声』を観て、なかなか良い役者さんだなあ、と思ったんですけどね……こんな扱いでも出たいのかな、ハリウッドの大作映画って。

 と、例のごとく悪口雑言を並べてしまったのですが、まあ、新型コロナですっかり変わってしまった世界のなかで、こうしてゴジラをスクリーンで観られるだけでも幸運ではあります。

 すごくまわりくどくてわかりにくいプロセスを辿った末に「お約束」的に終わっていく映画ではありますが、こういう「まあ、ゴジラもまだまだ元気みたいでよかったねえ」と思いながら家路につく映画も、世界には必要なのでしょう。

 『エヴァ』みたいに、「観終えたあと、しばらく魂を抜かれてしまう」ような作品を観たい、あるいは観ることができるコンディションばかりじゃないですし。
 とりあえずゴジラが出てくる新しい映画です。それでよければどうぞ、そんな感じです。


fujipon.hatenadiary.com
fujipon.hatenadiary.com

アクセスカウンター