琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

序章(3)

まあしかし、大概において、メール交換というやつは、僕を失望させた。
自分の自慢ばっかり語りたがるヤツや一行返信(これは女性に多かった)。

〜〜〜〜〜〜
昨日は1日ずっと当直で、20人くらい患者さんを診たと思います。
中には重症の人もいて、結局、4時くらいまで一睡もできませんでした。
医者不足だというけれど、これで明日も朝から普通に仕事なんて…

>たいへんでしたね(相手の返事)

昨日は、「タイタニック」を観に行ったのですが、あの冷たく暗い海に、どうしようもないままに沈んでいくしかなかった人々がいたということを想像すると、とても悲しい気持ちになるのです。

>そうですね(相手の返事)

〜〜〜〜〜〜

 お前は「赤ペン先生」かっ!!

 女性はこんな人がけっこう多かったのだ。
 相手の引用に、一行返信の連続。
 あと、顔文字ばっかりで内容が全くないメールとか。
 こんなのコミュニケーションじゃない!
 僕も次第にイヤになってきて、コピー&ペーストの文章プラスアルファ、くらいのメールしか送らなくなっていった。
 結局、人間というのは、自分が与えたほどのものを相手から受け取ることはできない、と常に感じ続けているものなのかもしれないが…
 それにしても、さすがに疲れた。
 僕は、メール友達には、もう飽き飽きした。
 一部の気があった人たちとは、それからもしばらくはやりとりしていたけれど。

 そうして、僕とネットとの距離は、また少し遠ざかった。
 
 しかし、転機は突然にやってきたのだ。
 それは、当直中のことだった。
 けっこう忙しい病院で缶詰になった僕は、「何か面白いこと」を探していた。
 その当直室のマンガは読みつくしたし、競馬も外れた。

 そこで、なんとなく、「ネットで日記を書く」ことにした。
 もちろん、誰かに読ませる気持ちはあまり無かった。
 内心は、人気者になることを少しは期待していたのかもしれないけど。

 しかし、最初の頃の日記を読み返すと、どう考えても単なる鬱憤晴らしだな。
 競馬の結果に対する文句とかを延々と書いているし。
 で、書いていれば何らかのリアクションがあるんじゃないかと期待していたのだけれど、現実には、何もなかった。本当に、何も無かったのだ。
 カウンターも、1日10アクセスもあれば、「何かあったんじゃないか」と思ったくらいだ。要するに、「ひそかな愉しみ」レベルであり、読まれることを期待も希望もしていなかったのだ。まあ、家の鍵を厳重にかけまくって、中でひとりでストリップショーをやっているようなものだった。
 書いたり書かなかったり、書かなかったり。というか、気が向いたときに、書きたいことを書くくらいだった。2ヶ月くらいほとんど書かなかったこともある。めんどくさくても、閉鎖する必要すらなかった。そんな状態が、1年くらい続いた。

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