琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

ベルカ、吠えないのか?

ベルカ、吠えないのか?

ベルカ、吠えないのか?

 4頭の軍用犬とその子孫たちが辿る数奇な(と思うのは人間だけなのかもしれないけど)運命と、現代ロシアでの抗争が交互に語られながら、次第に結びついていくという物語。最初は「犬の歴史編」のほうは面白かったのだけれど系図が今ひとつ把握しきれず、ロシア編はとばしてしまいたい衝動に駆られるくらいで、なんだかどうも物語に乗り切れないような感じだったのですけど、最後のほうは一気に読み終えました。けっこう長くて厚い本なのですが、もっと続きの物語を読みたいなあ、とか考えてみたり。
 人間と犬は古代からずっと友達であるわけなのですが、この本には、「愛玩犬ではない犬」のあらゆる生き様が描かれています。人の立場からすれば、ちょっと目を覆いたくなるような状況もあるのですが、それでも生命体としての犬は、自分の系譜を繋いでいくのです。僕は競馬大好きなんですが、考えてみれば、こういう軍用犬とかサラブレッドのような「人間の都合で配合させられる動物」あるいは「強いもの、優れたものしか子孫を残せない動物」にとっては、何代かさかのぼれば祖先は同じ、ということはけっして珍しいことではないのですよね。むしろ人間の「雑種ぶり」のほうが特異的なのかもしれません。
 それにしても、この壮大な物語をひたすら筆を抑えて書いている古川さんの筆力もすごいですよね。逆に、凄い状況が淡々と描かれていて、面食らってしまうくらい。
 あと、「宇宙犬」のエピソードがこの物語の1本の芯となっていて、最初に「宇宙に行った犬」であるライカと、「宇宙から帰還した犬」であるベルカとストレルカの話が繰り返し語られます。僕はライカは知っていたけれど、ベルカとストレルカの名前までは知りませんでした。本当にあの時代(1957年=イヌ紀元ゼロ年)の犬たちが、宇宙からの視線を感じていたかとうのは僕にはわからないのだけれども、古代の犬たちの仕事は狩猟と守衛くらいだったのに、今の犬たちも人間と同じように、急速にいろんな役割を背負わされているのですよね。犬も大変だなあ。でも、これを読んだらしばらく犬を見たら警戒してしまいそう。もっとも、相手が「本物」なら、僕が警戒したってムダだろうけど…
 僕はこういう「歴史俯瞰もの」とか「系譜もの」は大好きなんですよね。この作品では、「収束するところ」に途中である程度予測がつくのが、ちょっと残念なのですが、久々に骨太の「物語」を読んだという気がしました。美女も「恋愛関係」も全然(犬同士のものは除いて)出てこないというのは、現代小説としては、ものすごく「異色」だよなあ。でも、その徹底っぷりがカッコいい!

 ちなみに、http://d.hatena.ne.jp/hibigen/20050620/p1で、id:hibigenさんがこの本を紹介されていて(それで僕も安心して読めたのですけど)、「宇宙犬」についての記事も紹介されていますので、興味のある方はぜひ。

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