琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

暗くなく、悲しくなく、ひとが死ななくて、しかも面白い本

http://d.hatena.ne.jp/akichu/20060116

さて、こういう相談を受けたら、僕はどんな本を薦めるだろう?と、これを読んでからずっと考えていました。あらためてそう言われてみると、このリクエストに応えられる本って、なかなか思い浮かばなくって。親世代(ちょうど還暦を過ぎたくらい)だったら、どんな本を読むのだろうか?というのがそもそも難しくて。ストレートなギャグ漫画ではあまりに悪ノリしすぎているし、ギャグってけっこう平気で人が死んだり不幸になったりもするし、本当に心が疲れているときって、かえって笑えないこともあるのですよね。
ベストセラーになる本の多くは、「感動」を増幅するために「不幸」が描かれます。あるいは、ミステリでは、「誰かが死ぬこと」が大前提。実は、読書というのは、「心が揺れても大丈夫な状態にある人」にだけ許された娯楽なのかもしれません。

それで、僕なりに考えてみたのですけど、近著では、

いつかパラソルの下で

いつかパラソルの下で

とか、ちょっと古くてよければ、
哀愁の町に霧が降るのだ〈上巻〉 (新潮文庫)

哀愁の町に霧が降るのだ〈上巻〉 (新潮文庫)

なんて良いかもしれません。ただ、どちらにしても、親世代には、ちょっと「若い」かもしれないような気もします。
それなら、向田邦子さんのエッセイなんてどうだろうか。

しかし、そうやってずっと考えていって最後にたどりついたのは、あまりにベタなのですけど、

もものかんづめ (集英社文庫)

もものかんづめ (集英社文庫)

でした。さくらももこさんのエッセイというのは、そういう「何か愉しいものを必要としているけれど、いわゆる『文学』のよそよそしさについていけない人」や「ひとが死んだりすることによって感動を押し付けられることに違和感を感じている人」向きなのかもしれないなあ、と思ったのです。そして、そういう「暗くなく、悲しくなく、ひとが死なない本」へのニーズというのはものすごく大きいのにもかかわらず、それを「書ける」人というのは、本当に少ないような気がします。まあ、書く側だって「日本中が泣いた!」とか言われたいのだろうし、「読み流されたくない」のはしょうがない面もあるのでしょうが。
そういえば、東海林さだおさんの食べ物エッセイとかもそうですよね。あのエッセイは、そういう視点でみれば、本当に凄い仕事だと思います。

意外と、ささくれだっていないものを求めているひとは多いはずなのに。

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