琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

県庁の星

県庁の星

県庁の星

「努力!友情!勝利!」って感じです。たぶん作者の桂さんは「週刊少年ジャンプ世代」なのだと思います。
シンプルで元気が出そうな話が読みたい時期に、映画の予告編を観て買ったのですが、端的に申し上げると、「可も無く不可も無く」というところでしょうか。いやむしろ僕にとっては「やや不可」なのですが。
というのも、この小説の主人公は県庁から民間企業に研修で派遣されてきた30過ぎのエリート公務員・野村聡なのですが、なんだかね、本当にこの人の描き方がステレオタイプというか、「まさにお役人」なんですよ。それで、民間企業に派遣されても、なんか上から物事を観ているようなイヤなヤツで、みんなから「県庁さん」とか呼ばれて、煙たがられているんですよね。
でもね、作者はどうも「みなさんも、公務員って頭が固くて融通が利かず、民間企業をバカにしているような人ばっかりだと思ってますよね」という暗黙の了解を押し付けてくるわけですよ、この小説の「お約束」として。正直、僕が公務員だったら、こんな描き方されたら悲しくなると思います。というか、エリート公務員にだって、いろんな人がいてしかるべきなんじゃないの?って。
僕なども「お医者様」というカテゴリーでひとくくりにされて、逆差別みたいな扱いを受けて寂しく感じたことが多々あるので、なんだか、「みんな公務員キライだよね!」と、ここまで爽やかに書かれていると、なんだか自分が責められているような気分にすらなってしまうのです。こういうのを読んで、「民間」の人たちが、公務員に対して快哉を叫ぶのだとしたら、正直その溝の深さにゾッとするよ。
それで、彼が変わっている様子もなんだか説明不足だし、なんだかみんな急にいい人になっちゃうし、恋人の女の子とか、どうも伏線っぽく書かれているのに何の意味もないキャラクターになっちゃってるし、これなら「となり町戦争」読みましょうよ、とアピールしたくもなるのです。
ただ、「つまらない」かと問われると、冒頭にあげた「ジャンプ的世界観」に僕が慣れきっているためか、けっこう楽しく読めたのも事実なんですよね。「良い小説」だとは思わないけれど、「それなりに面白い本」ではあると思います。スーパーの接客のコツとか、結構興味深かったので、むしろ、「職業小説」としての完成度をもっと追求してみたら良かったのかもしれません。
あと、この本、とくに前半で、同じ段落のなかで視点が急に変わって(客観描写→主人公からの視点→客観描写など)、何度か「えっ?これ誰のセリフ?」と読み返さなければならないところがありました。
まあ、興味がある人は、文庫になってからでも遅くないんじゃないかな、というのが僕のオススメ度です。
しかし、柴咲コウが、二宮さんなの……?

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