琥珀色の戯言

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「ファミ通」クロスレビュー史

「ログイン」の別冊として発行されたときから、ほとんど休むことなく「ファミ通」を愛読してきた僕も、確かに、相対的な「殿堂」の価値って低下しているよなあ、と感じています。昔、ファミ通に「クロスレビュー」ができたときは本当に衝撃的で、それまでのゲーム雑誌というのは、徳間書店ファミマガに代表されるような「御用雑誌」ばかりで、とくに大手メーカーのキャラクターものの新作ソフトなんていうのは、まず悪口が書かれることはない、という時代だったんですよね。クロスレビューって、まさに「スポンサーを評価する」ということでしから、開始当初はかなり問題にもなったようですし。しかしまあ、クロスレビューが始まった当初から「有名メーカーには甘い」と言われていたのもまた事実で、雑誌媒体としては、そりゃあもうスポンサーに「配慮」しなければならない面があったのはいたしかたなかったのかな、という気もするのですが。別に昔は評価が激辛だったわけじゃなくて、また森下万里子さんが「フォロー」してるよヌルいなファミ通、とかいうのもまた読者の楽しみでもあったのです。ところで、森下さんは今どこで何をされているんでしょうねほんとに。
それで、この「プラチナ殿堂」の増加なのですが、僕も最近のファミ通は、やたらと「殿堂入り」がたくさん出るという印象は持っていたのです。ただし、発売されるゲームソフトそのものの数がどんどん増えているのも事実なので、一概に「プラチナが増えた」と言いきる自信もないのですけど。
http://geimin.net/da/cross_review.php
↑で並んでいる「プラチナ殿堂ソフト」のラインナップを見ると、まあ、確かに「クソゲー」は入っていないな、という印象は受けます。ただし、2000年くらいを境に、「プラチナのなかには、昔だったらゴールド止まりのものが多いのではないか」「続編モノは+2点くらいの評価をされているのではないか」とかいう感じがするのです。もちろん、続編モノを各メーカーが力を入れて作っているというのはわかりますが。

しかし、最近の「ファミ通」を読んでいて思うのは、「本当にこのレビュアーたちは、これだけのゲームを遊べているのだろうか?」ということなんですよね。昔のファミコン時代ならともかく、いくらゲームをするのが仕事だからといっても、大作RPGとかネットワークゲームなんて、それ1本で1週間くらいすぐに経ってしまうのではないかと思います。もちろん、全然触ってないなんてことはないでしょうが、年末みたいに本数の多いときって、けっこう「印象批評」みたいになっているのではないかなあ。もっとも、「ちょっと遊んで面白くないゲーム」というのは、このゲーム飽和時代に生き残るのは難しいかもしれませんが。そして、読む側である僕としても、「殿堂入りすらしていないソフトは、よっぽど興味があるもの以外は流し読み」なんですよね最近は。いや昔の新作ゲームそのものが少ない時代や、今でも全体の本数が少ない週は、クソゲークソゲーっぷりを堪能するという楽しみもあるのですが、こんなにたくさん並んでいると、「とりあえず気になってたゲームと殿堂入りしているやつだけ読んどこう」という感じです。
たぶん、編集部サイドとしても、「とりあえず殿堂入りさせとかなくちゃ、読者の選択肢にも入れてもらえないし」というような発想があるのかな、とも感じます。そもそも「30点以上でブロンズ殿堂」っていうのができたとき、僕は正直「ブロンズ殿堂なんて、そんな中途半端な基準が必要なのか?」と疑問だったのですけど(通算180勝だけどもったいないからオマケで野球殿堂入り、なんていうふうになったら、「殿堂」そのものの価値が低下しますよね)、とりあえずそうやって「殿堂入り」にしてしまわないとどうしようもなくなってきているのでしょうね。つまり、勝負はもう「殿堂入りするかどうか?」ではなくて、「まずは殿堂入りしなければ話にならない」というレベルになっているのです。
それでもまあ、僕の実感としては、「クロスレビューがなければ存在そのものも知らなかったゲーム」というのもたくさんあるので、あれはあれで無くなったら悲しいと思うんですけどね。やたら低い点をつけて罵倒したりする人がいなくなってしまったのは、ちょっと寂しいですが。

最後に、「ファミ通クロスレビューを読むときの注意点」を挙げておしまいにします。

ファミ通」のクロスレビューに騙されないために
(1)本来掲載されるべき週に載らないゲームは要注意!
(2)大手メーカー(セガ、光栄、ソニースクウェア・エニックスカプコン)のソフトの点数は、鵜呑みにしないほうが無難。
(3)続編ソフトは、点数が甘くなりがち。
(4)携帯ゲーム、次世代機(今ならXbox360など)の点数は、やや甘め。
(5)とくに、「大手メーカーの続編ソフトなのに、ギリギリ30点でブロンズ殿堂」とかいうのは、地雷の可能性高し。
(6)「面白い」は鵜呑みにはできないが、「つまらない」と堂々と書いてあるものは、キワモノ好きでなければ切り捨ててよい。
(7)点数そのものよりも、レビュー自体に「熱意」が感じられないゲームは、そういう評価なのだと判断すべし。
(8)レビュアーが書いている内容で、いちばん注意して読むべきポイントは、「操作性」に対する言及。「ちょっと複雑ですが」というような「サイン」を見落とすな!

ついでにいくつか言及しておくと、長年読んでいると、(1)の場合は、「その点数で載せられたら困る!」というようなメーカーからの圧力がかかっている可能性があると思われます。このあいだのFF7DCなんて、かなり遅れての掲載になりましたし。なかには「DQ8」のように、「掲載は遅れたけど良作」の場合もあるのですが、ゲームは1〜2週間遅れても腐りませんから、「注目ソフトなのにレビュー遅れ」の場合には、疑ってかかったほうが無難ではないかと。まあ、点数そのものを改ざんして載せることなく、こういう形にしているのは、ファミ通の「良心」だと言えなくもないかな、と。とりあえず待てばいいんだから。(5)なんてのは、「薦められないけどけなせない」というレビュアーの苦悩っぷりを楽しむのも一興かもしれません。(8)は、あれだけゲームに慣れている人たちが「めんどくさい」と書いているものは、一般ゲーマーには「ついていけない」可能性が高いので要注意。
ファミ通」は、その影響力を考えればけっこう良心的につくられている雑誌だと思うのだけど、そこにはやっぱりいろんなシガラミもあるのです、たぶんね。

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