琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

封印作品の謎2

封印作品の謎 2

封印作品の謎 2

僕はこういう「雑学系ノンフィクション」大好きなので、前作も非常に面白く読ませていただいたのですが、今回の「2」は、取り上げられている作品が僕にとっても懐かしく、記憶に残っていたということもあり、夢中になって読んでしまいました。
それにしても、「ジャングル黒べえ」はしょうがないのかな、という感じではあったのですけど、「キャンディ・キャンディ」や「オバケのQ太郎」まで「封印」されていたとは知りませんでした。
そして、「封印」された理由は「差別表現などの表現上の問題」や「売れないから」ではなくて、

 結局、どの作品も作り手たちの中にある感情的な問題が大きいのだ。製作時のささいな矛盾……。60年代から70年代当時であれば何の問題にもならなかったことが、作品の発表から数十年たつうちに、封印の元凶へと発展していた。ビジネスとしての巨大化や金銭問題もあったかもしれない。だが、それは封印の本質ではない。原因が何であれ、作り手たちの間に修復不可能な心の傷が生まれ、「作品を封印しなくてはならない」という感情が生み出されてしまったこと。それこそが、封印の最大の理由だった。

というふうに、安藤さんは書かれています。
実は、かなり綿密に関係者に取材されているこの本のなかさえ、「封印の真相」が完全に明らかになった作品のほうが少なくて、これを書かれた安藤さんは本当に辛かっただろうなあ、と感じました。人が「語りたがらないこと」を聞くというのは、取材する側にとっても、かなりキツイ仕事だったはずです。
封印作品」に対する興味が満たされるのはもちろんなのですが、クリエイターにとっての「作品」が、商品として変容させられてしまったり、世間の風潮に煽られて失われていくという「宿命」を感じる本でした。取り上げられている作品(『キャンディ・キャンディ』『ジャンクル黒べえ』『オバケのQ太郎』『サンダーマスク』に興味がある人には、とくにお薦めです。

「封印」とは関係ないのですが、読んでいて、僕がホッとしたエピソードをひとつ引用しておきます。

 しかし、生みの親の藤本と安孫子は、『オバQ』が出ないことを本当に望んでいたのだろうか。「2人はコンビ解消後も、死ぬまで仲が良かった」と、関係者が一致して証言している。

 ああ、周囲にはいろんな「軋轢」があって、2人はコンビを解散し、『オバQ』はその犠牲になっているけれど、「藤子不二雄」は、藤本さんが死ぬまでずっと仲良しだった、僕はなんだか、そのことにいちばん安心しました。

アクセスカウンター