琥珀色の戯言

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センセイの鞄

センセイの鞄 (文春文庫)

センセイの鞄 (文春文庫)

もう、言わずと知れた名作なわけなのですが、なんというか、あらためて文庫で読み返してみて、ものすごくしんみりとしてしまいました。単行本で読んだときは、あまりに淡々としていて、「御都合主義っぽい話だなあ、こんなこと実際にあるわけないだろ…」と心の奥底で、「おじさまキラー」川上弘美に毒づいていたりもしたのですが、あの頃より少しだけ歳を取った僕には、この世界が、あの頃よりもっと親密に感じられるようになりました。
それにしても川上さんというのは、本当に話のアクセントのつけかたが上手いというか、あだち充の「タッチ」かよ!と読み終えたあとに突っ込んでみたくなったりしたのですが、一般的な作家だったら、もっとねっとりしっとり描きたいような場面の描写がさらっと流されているかわりに、あまり本筋とは関係ない(ように思える)心象風景が詳細に語られたりしていて、しかも、それがこの作品の「こんな世界があってもいいかな感」を高めているのです。一種のファンタジー小説なのかもしれません、これって。

ちなみに、この小説って、センセイが柄本明さん、ツキコさんが小泉今日子さんでドラマ化されています。残念ながら、僕は以前録画した記憶はありながら、まだ未見なんですけど。それにしても、ツキコ役の小泉さんが、若いジャニーズの人と交際しているっていうんですから、歴史は繰り返すっていうか(違うか…)

あと、小説のなかでは、小島孝のギラギラした言動が滅法ムカつくわけですが、30代の男って大概こんなもんだよな、と同世代になってしまった僕はちょっと悲しくなりました。

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