琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

「新潮文庫の100冊」vs「ナツイチ」vs「発見。角川文庫」

http://elleryqueen.seesaa.net/article/22097459.html

恒例の「夏の文庫キャンペーン」に対する非常に興味深い考察。
基本的に、よほどの本好きか「指名買い」でもない限り、本屋に立ち寄ってみたときに目について「選択対象」になりやすいのは、こういう「文庫フェア」の作品ではないかと思うのです。まあ、「当店のオススメメニュー」みたいなものですね。
でも、今年のこれらの文庫フェアの作品には、いまひとつピンとくるものが少なかったのですよね。既読であったり、この作家だったら、他にもっと良い作品があるんじゃない?と思ったり。しかし、こうやってみると、文庫フェアで取り上げられている作家の「傾向」というのは、明らかに存在しているんだなあ、と感じます。ただ、このラインナップって、誰をターゲットにしているのか非常にわかりにくいですよね。僕のような中年男性がターゲットではないことだけはわかりますけど。

それで、このキャンペーン文庫のなかで、僕が既読のもののなかで「今、読みたい本」を挙げてみたいと思います。

地獄変 (集英社文庫)

地獄変 (集英社文庫)

芥川龍之介の名作。なんというか、内容の凄まじさと、そこにある「美学」に共感してしまう自分の心の闇に、思わず嘆息。
余談なのですが、以前、裕木奈江さんがデビューしたての頃インタビューで、「好きな作品」として、この『地獄変』を挙げていました。
いま思い返すに、彼女の人生もまた『地獄変』だったのかもしれません。


泣かない子供 (角川文庫)

泣かない子供 (角川文庫)

江國香織さんという作家に対する試験紙として有用なエッセイ集。このエッセイに共感できれば江國作品に「感情移入できる」だろうし、「なんだこの自意識過剰の天然ぶりっこ女は」と思ったら、たぶん江國さんの小説も受け入れ難いです。でも、「現代女性作家のエッセイのお手本」のような作品。


博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

もうベタベタなんですけど、考えてみれば、人がみやみやたらに死ぬこともなく、ドロドロとした恋愛があるわけでもないのにちゃんと心の中に何かを残してくれるこの作品というのは、本当に傑作なのかもしれませんね。ちょっと美しすぎるかな、とも思うし、僕にとって江夏はカープの選手なのですけれども。


きまぐれロボット (角川文庫)

きまぐれロボット (角川文庫)

星新一さんは、絶対これから再評価されていく作家だと思います。あまりに上手すぎて、なんだか悔しくなります。
なかでもこれは名作。


永遠の出口 (集英社文庫(日本))

永遠の出口 (集英社文庫(日本))

直木賞作家・森絵都さんの代表作。よくこんなことまで覚えていたなあ、と感動するくらいの「女の子」の年代記。


既読のものだけということで、かなり少ない母集団からの選択だったのですが、こうしてみると、けっこう読んでみたくなるような未読の作品もありそうです。「なんでこの作家はこの作品なんだ!」と不満を抱く前に、とりあえず今まで読んだことがない作家の作品に挑戦してみるのも一興かもしれませんね。

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