琥珀色の戯言

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八月の路上に捨てる ☆☆☆

八月の路上に捨てる

八月の路上に捨てる

 文藝春秋の2006年9月号に全文掲載されていたのを読みました。
 たぶんこの作品を単行本で1000円出して買うとちょっと勿体ないような気がするだろうし、文庫なら及第点かな、という感じです。
 「文藝春秋」の1コンテンツとしては、かなりお得感がありました。「文藝春秋」って、読んでみると対談記事とかけっこう面白いんだけれど、ちょっと内容が詰めこまれすぎていて、毎月買う気力は起きないんですよね。でも、僕が長期入院するとしたら、毎月買いそうな気はします。
 この「八月の路上に捨てる」なのですが、離婚届の提出を翌日に控えた男性が、自動販売機にジュースを補充する仕事をしながら同僚の年上女性に結婚生活を振り返る、という内容です。まあ、読んでいて、仕事中にそこまでわざわざ他人のプライベートに踏み込んだ会話をしたがるような人って、いるの?というような不自然さは感じたのですが、主人公・敦が振り返る「結婚生活が破綻していくプロセス」のリアルさには、しみじみとせつない気持ちになりました。どちらが悪いというよりは、こういうすれ違いみたいなものが重なっていくことによって、結婚生活というのは破綻していくのだな、という絶望感。ちなみに、作者の伊藤たかみさんも離婚経験者だそうなのです。
 文章そのものに関しては、

 どうしてだろう、敦はとてもしらけた。

 なんていう、「いくらなんでも、ちょっとその表現はストレートすぎて『文学的』ではないのでは?」と思うようなところがけっこう目についたし、正直「説明過多」の印象もあったのですが、この「離婚過程」のリアルさには、十分読む価値があります。
 でも、ヘルペスができてる女性とは、僕はする気にはなれないなあ。いくら心がささくれ立っていても。

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