琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

アディダスVSプーマ ☆☆☆☆

アディダスVSプーマ もうひとつの代理戦争

アディダスVSプーマ もうひとつの代理戦争

 最近こういうノンフィクションを全然読んでいなかったので慣れるまで少し時間がかかりましたが、久々に「引き込まれる読書」をしたような気がします。400ページを超えるけっこう厚い本で、情報量もかなり多いにもかかわらず、読み終えたあとも、まだ読み足りない感じもするんですよね。いや、「アディタス」という会社の歴史は、現在進行形で続いているのだから、それも当然のことなのかもしれませんが。
 織物工場の町・ドイツのヘルツォーゲンアウラッハに代々続いていた”職工”ダスラー家に生まれた兄弟、フリッツ、ルドルフ、アディは製靴業を生業にするようになるのですが、「徹底したスポーツシューズ職人」であったアディと「技術者というより営業マン」であったルドルフは会社の主導権争いによって仲たがいしてしまい、それによって、「アディダス」と「プーマ」という2つのブランドが1本の川を挟んで誕生します。そして、この2社は、それまでの「良い靴を作って売る」というシンプルな商売から、「スポーツビジネス」を開拓し、巨大な世界企業として、スポーツ経済、あるいはスポーツそのものを変革していくのです。この本のなかには、「美談」ばかりが取り上げられているわけはなく、まさに「泥仕合」しか言いようがないようなエピソードも書かれています。アディダスとプーマは現在でも有名なブランドなのですから、よくこんなことを書かせてもらったなあ、と感心してしまいました。アディダスもプーマも、むしろ、この本の著述に関して協力的ですらあったそうですし。
 そして、この一冊の本を書くために、これだけの綿密な取材がなされているということにも素直に感動してしまいます。難点といえば、これを読むと、もっと「ナイキ」側の話も読みたくなることくらいでしょうか。
 この本の「主人公」のひとりは、間違いなく、アディ・ダスラーの長男であり「究極のビジネスマン」であったホルスト・ダスラーなのですが、このホルストの活躍ぶりと、彼があれだけのことをしたにもかかわらず(逆に、それも一因となり)、この巨大企業が凋落してしまう姿には、とても考えさせられるものがありました。しかし、世界の一流のビジネスマンというのは、こんなにも働いているものなのかと驚かされます。
 「人間ドラマ」としても十分に楽しめる作品ですので、少しでも興味を持たれた方はぜひ。

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