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以下完全ネタバレなので御注意ください。
このドラマ、ところどころしか観ていなかったのですけれども、昨日の最終回は本当に観てよかったなあ、と思いました。「桑野成分」をかなり多く含有している僕にとっては、考えさせられるところも多かったですし。
最終回を観ていてあらためて感じたのは、このドラマを支えていたのは、阿部寛さんと夏川結衣さんの「役者力」みたいなものだったのだなあ、ということです。「あなたとキャッチボールがしたいんです」というシーンでの早坂先生と桑野との「空気」って、ひとつ間違えば「わざとらしい気取ったやりとり」にしか見えなくなる危険性を孕んでいたはずなのに、それをあれだけの名シーンにしてしまった2人の熱演には感動してしまいました。阿部さんの挙動不審な眼の動きなんて、本当に凄い。いや、「大人」って、あれだけのことを言うのに、ものすごく緊張する生き物なんだよなあ、と僕もドキドキしながら見てました。
「カンチ、セックスしよ!」なんて、絶対に言えないんだよ僕らは。
「ボールは、投げました」
そう、このドラマって、「結婚できない男」桑野信介の物語であるのと同時に、「医者」として強く生きていかなければならないために、自分を固い殻で覆ってしまっていた「結婚できない女」早坂夏美の物語でもあったんですよね。「キャッチボールができない」のは、どちらか一方だけの責任ではなく、「相手がボールを受け取ってくれない」ことを言い訳にして、自分のほうからボールを投げようともしない側にも問題はあったのです。どちらかが最初にボールを投げなければ、キャッチボールにならないものね。ああ、身につまされる話だなあ。
だから、そのあとの「あなたのことは好きだけど結婚できない」という信介の言葉に怒りまくる早坂先生の態度には、かなり違和感もあったのです。早坂先生にとっては、桑野が「ボールを受けとめて、投げ返してくれた」という時点で、すでに「目的は達して」いたはずなのに。まあ、最後はいい感じの雰囲気で終わったので、あれはドラマの構成上「笑いをとる」ための演出であって、全体からみれば些細なことかもしれませんが。ほんと、いいカップルになりそうですものね、あの2人。
「こんなにうまくいくはずはない」のは百も承知ですけど、こういうフィクションなら僕は許せます。出演者は地味だし、衝撃的な事件も起こらないし、登場人物はどこにでもいそうな人ばかりなのに、こんなに素晴らしい作品をみせてくれたのだから。