- 作者: 古川日出男
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すごい、すごすぎるよヒデオさん!
正直、冒頭のの50ページくらいまでは「ちょっととっつきにくい作品だなあ」「アルスラーン戦記のパクリ?」と思いながら読んでいたのですが、読みすすめていくうちに、どっぷりとハマってしまいました。いや、そんなに奇を衒った物語ではなく、むしろ「ファンタジーの王道」(ちなみに、古川日出男さんって、『ウィザードリィ』のノベライズの『砂の王』という作品を書かれた方だったんですね。それも驚きました)なのですけれど、その筆力と「骨太な物語力」に、寝食も仕事も忘れて(というか、仕事はむしろ忘れたかったのかも)、読みふけってしまいました。この精緻で幻想的な世界観と言ったら!
歴史やファンタジーが好きな人、現代文学の世界の狭さに飽きた人、そして何より本が好きな人は、ぜひ一度読んでみてください。
以下ネタバレ感想なので、未読の方はご注意を。
いや、それにしても見事に騙されちまった。僕はこの本の冒頭を読みながら、「これは、デレク・ハートフィールド(「風の歌を聴け」(村上春樹)に出てくる、架空の小説家)だな」と思っていたのですが、この作品があまりに緻密な世界観と「王道」として語り継がれるだけの物語の力を持っていたため、「いや、こんな凄いのは、翻訳でもないと、日本人にはオリジナルとしては書けないよな、きっと」と自分を納得させてしまったのです。でも、結局はすべて古川さんのオリジナルだったなんて!
(参考:ブックレビュー『アラビアの夜の種族』http://www.sf-fantasy.com/magazine/bookreview/020601.shtml)
僕はアーダムのキャラがすごく気に入っていて(やってることはムチャクチャで、絶対友達にはなれないタイプなんですが)、こういう「けっして正義ではない人々」が入り乱れている物語って、書く側にとっては、けっこう難しいのではないかと思うのです。それでも、この物語は、なんなんだこれは!と圧倒されながら、読み進めずにはいられなくなるんですよね。最後の「アーダムの書」とか「アイユーブの秘密」のところなどは、テーマには沿ってはいるもののちょっと唐突な印象も捨てきれないのですが、とにかく古川さんは本が大好きで、データ収集マニアなんだなあ、感じました。RPGをやるときには、絶対完璧にマッピングするタイプだと思います。こういう人だから『ベルカ』も書けたのか、と納得してしまいました。プロ作家って、やっぱり凄い!と圧倒してくれる作品です。
おまけとして、『アラビアの夜の種族』の著者インタビューを。
http://www.bk1.co.jp/contents/columns/backnumber/01010700_0034_0000000016.asp?partnerid=p-ken200606