琥珀色の戯言

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狂気の沙汰も金次第 ☆☆☆☆

狂気の沙汰も金次第 (新潮文庫)

狂気の沙汰も金次第 (新潮文庫)

文庫は1976年10日発行になりますから、もう出てから30年になるんですね。
僕が最初にこのエッセイ集を読んだのが高校時代。その時点ですでに出てから10年くらい経っていたわけですが、それでも、初めて読んだときには「筒井康隆って凄いなあ!」と感動したものです。最近、新潮文庫の「THEミリオン」というシリーズで書店に平積みにされていたので、「さすがに今読んだらあんまり面白くないだろうな」なんて思いつつ、懐かしさに駆られて買ったのですけど、読んでみたら十分楽しめたので驚きました。あの頃読んだ筒井康隆という人は「時代を先取りした作家」だったのですが、こうして時間が経ってから読むと、かえってその「普遍性」みたいなものが伝わってくるのです。130回分の連載エッセイが収録されているのですが、1回1回にとにかくムダが無い。筒井さんはアイディアや文体、文章のリズムなどの個性が語られることが多い作家なのですが、基本的な「言葉を紡ぐ能力」そのものが高いのだなあ、とあらためて感じました。高校時代は、「筒井さんは、よくこんな過激なことを書くなあ!」と驚いたり、ちょっと引いたりもしていたのですが、今読んでみると、そういう衝撃があまり無くなってしまっているのは、僕が変わったのか、世界が変わったのか。

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