琥珀色の戯言

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『東京タワー』感想

『東京タワー』番組公式サイト
http://www.fujitv.co.jp/tokyotower/index2.html

 番組宣伝で、「ついに!」という言葉が出てくるたびに、極楽とんぼの山本氏の顔が浮かんできてなんだか興醒めしまくっていたのですが、それでもやっぱり観てしまいました『東京タワー』、流行りモノには弱いです。
 それで、観終わっての感想なのですが、「ああ、良いドラマだったなあ」としか言いようがありません。全体的に抑え気味な演出で「泣かせ」に走りすぎていない点も好感が持てました。田中裕子さんの愛情と可憐さと哀愁を漂わせた「オカン」と大泉洋さんの「ボク」は、素晴らしいキャスティングだったと思います。なんというか、「こんな親子、どこにでもいるよなあ……」というか、僕も「オカン」に自分の母親の記憶の欠片を見つけましたし、「ボク」に自分の一部が含まれていることを感じました。たぶん、多くの人がそうだったのではないかなあ。
 しかし、原作を読んだ僕にとっては、なんだか「全体的にうまくまとまりすぎている」という気もしなくはないんですよね。そして、読んでいるときにはなんだかうざったく感じてしょうがなかった幼少時代の描写とか文学青年チックな語り口とかが無いと、意外に「普通の話」になってしまうのだなあ、とも思いました。実は、ああいう部分こそが、小説としての『東京タワー』の魅力だったのかもしれません。

 あと、広末涼子さんの「真沙美」の扱いには、だいぶ苦慮していたみたいですね。原作では、「オカンと彼女は大の仲良しで、リリーさんと彼女が別れたあともずっとオカンのお見舞いに来ていた」そうなのですが、テレビドラマとしては、そういう人間関係とかはわかりにくいということで、ラストは「この二人、よりを戻すのかも?」と想像させるような終わり方になっていました。現実のリリーさんはいまだに独身なので、彼女とは終わってしまっているわけですが。
 結局、リリーさんと真沙美がうまくいかなかったこととか、あの赤い箱に入っているのが別に意外でも感動的なものでもないところなど、微妙に読者の「期待感」とズレているところが、あの小説版の『東京タワー』のリアリティであり、魅力なのかもしれません。

 でも、男はたぶん、このドラマを観たらみんな、自分の親、とくに母親のことを思い出さずにはいられませんよね。僕の母親も、「ごはんちゃんと食べてる?」なんて、どう考えても栄養状態が良すぎる僕のことをずっと心配してくれていたんだよなあ。
 まあ、リリーさんがイラストレーターとして成功したからこそ許される「追憶」であり、これが世の息子たちによる安易な「贖罪」でしかないとしても、やっぱり、感動してしまうドラマではありました。それにしても、この作品で描かれる筑豊は酷いな……

本の『東京タワー』の感想は↓に。
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20060314#p2


付記(11/21):ドラマ『東京タワー』の視聴率は、15.4%だったらしいです。土曜の夜ということを考えても、あれだけ番宣に力を入れたにもかかわらずこの数字というのは、ちょっと厳しい結果ですね。けっして、デキの悪いドラマではなかったと思うのですが。
あの事件がなくて、当初の予定通り放映されていたら、もうちょっと視聴率良かったのかな……

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