琥珀色の戯言

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ナイロビの蜂 ☆☆☆

ナイロビの蜂 [DVD]

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妻・テッサとともに、駐在先のナイロビで暮らしていた外交官のジャスティン。ある日、殺人事件で妻が亡くなったとの知らせが届く。しかし、妻の死に疑念を抱いたジャスティンは、事件の真相を独自に調べ始める。たどり着いた先はアフリカで横行する薬物実験、官僚と大手製薬会社との癒着、そして多国籍企業による世界的陰謀だった…。2005年度アカデミー賞4部門にノミネートされた、衝撃のリアル・ノンストップサスペンス。

ネット上では『ホテル・ルワンダ』が話題になりましたし、「欧米社会・先進国とアフリカ」を描くというのは、今の映画界のひとつの潮流なのかもしれません。
この作品なのですが、正直最初の1時間くらいはかなり眠かったです。「ミステリ」とは言うものの、結末以外はそんなに意外性はありませんでしたし。
いかにも怪しそうな妻・テッサと外交官なのにやや厭世的でガーデニングが趣味という夫・ジャスティンのカップルには、あんまりリアリティが無かったですしね。
ただ、妻を理不尽なかたちで失ってしまった夫の「痛み」だけは切実に伝わってくる映画でした。
観ていろいろ考えさせられる映画ではあります。この世界には、「暴力を使って人殺しをさせる」人がいて、そして、何の罪の意識も持たずに知らない人間を「始末」してしまえる人間がいる。そして、前者は「自分の手を汚していない」ことに納得し、後者は「自分は言われたことをやっただけだ」と開き直る。
僕はジャスティンという人の「とりあえず自分の周りの世界が幸せなら、それで十分だ」という生き方はすごくよくわかるし、僕にもそういう傾向があるのです。だから、妻・テッサが行っている「自分を犠牲にしてでも、世界を善い方向を導こう」という運動に対しては、「何もお前がそんなことをやる必要はないはずだ」と感じましたし、「社会正義を実現しようとする人々」は、必ずしもその身近な人たちを幸せにしているわけではないのですよね。

観て爽快感が得られる映画ではないですし、「で、結局何が言いたいのかな……」と悩んでしまう作品ではあるのですけど、こういう「無添加の痛み」を投げつけてくるような映画というのも、たまには悪くないとは思います。

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