琥珀色の戯言

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独白するユニバーサル横メルカトル ☆☆☆☆

独白するユニバーサル横メルカトル

独白するユニバーサル横メルカトル

「このミステリーがすごい!2007年版」で、見事第1位に輝いた作品。僕は基本的にホラーやグロテスクな作品は苦手なのですが、なんだかとても気になってしょうがなかったので読んでみました。
 この作品、平山さんが『異形コレクション』などに書かれたものを集めた短編集なのですが、冒頭の『C10H14N2(ニコチン)と少年』から、もうたまらない居心地の悪さ全開です。『Ω(オメガ)の聖餐』なんて、「こ、これを読むのはツライ…でもなんだか止められない……」としか言いようがありません。正直、読んでいてすごく気持ち悪いのですが、それこそまさに著者の「思惑通り」なわけで、非常に意地悪で良質な作品集だと言えるでしょう。ただ、題材が題材なので、やっぱり受け入れられない人も多いと思うし、僕も自分が読むのはOKだけど(こんな小説も「良質の作品として」中立的に評価できる自分という優越感に酔いつつ)、恋人とか自分の子供が読んでたら、ちょっと引くに違いありません。
 でも、単なる「残酷さ」「気持ち悪さ」だけではなくて、「シニカルなユーモアのセンス」にも満ちている作品ではあるんですよね。こんな場面で笑っていいんだろうか、と軽い自責の念にかられつつ、思わずニヤリ。まあ、僕自身は正直この1冊でもうお腹いっぱいという感じで、この人の作品は、これで打ち止めでいいかな、という気もしたんですけど。

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