琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

シャドウ ☆☆☆

シャドウ (ミステリ・フロンティア)

シャドウ (ミステリ・フロンティア)

人間は、死んだらどうなるの?―いなくなるのよ―いなくなって、どうなるの?―いなくなって、それだけなの―。その会話から三年後、鳳介の母はこの世を去った。父の洋一郎と二人だけの暮らしが始まって数日後、幼馴染みの亜紀の母親が自殺を遂げる。夫の職場である医科大学の研究棟の屋上から飛び降りたのだ。そして亜紀が交通事故に遭い、洋一郎までもが…。父とのささやかな幸せを願う小学五年生の少年が、苦悩の果てに辿り着いた驚愕の真実とは?話題作『向日葵の咲かない夏』の俊英が新たに放つ巧緻な傑作。 (Amazonの内容紹介より)

 今年度版の「このミステリーがすごい!」で3位にランクインしており、今年度の「このミス」ランクイン作品のなかでは、「独白するユニバーサル横メルカトル」とともに心惹かれた本。読んでみての感想は、「面白いサスペンスではあるけど、ミステリとしてはあまりに『後付けの事実』が多すぎるんじゃない?」というものでした。いやまあ、それを言うなら「横メルカトル」だって、ミステリっていうよりはファンタジーかホラーだろ、という話なのですが。
 いや、この本そのものは、非常に読みやすいし長さも適切だし、続きは気になるしで良作だと思うんですよ。ただ、考えれば考えるほど、「実際にそんなことできないだろ」とか「それはちょっとありえない」という気がしてきてしまうのです。ミステリにストーリーの意外性が必要なのはもちろんですが、いくらストーリーが面白くても、犯罪が起こる「動機」とか「犯行の過程」に説得力がないと、ちょっと興醒めしてしまうと思うんですよね。この作品は、ストーリー展開は90点だけれど、「動機」と「犯行の過程」があまりにも不自然な印象ではありました。「面白い小説」であることは間違いないんですけど。


 以下ネタバレです。未読の方は御遠慮ください。
 そもそも、最初に主人公一家の友人どうしの医師2人がこちらも友人同士の医学部女子2人と結婚するという設定までは許せるとしても、「経済的な理由もあったのか」女性が2人とも医学部をやめてしまうという時点で、僕はもう「そんなヤワな女子学生は医学部には(ほとんど)いねえよ」と呟いてしまいました。あそこに来る女子というのは「なんだったら、自分が嫁さんもらって外で働きたい」って人が大部分だし、経済的な事情であれば、なおさら「せめて卒業して医師免許を取っておく」ほうが自然です。医学部を途中でやめちゃう人はもちろんいるのですが、「学生結婚して退学する」人はほとんどいませんよ。なんだかそこでかなりがっかり。
 そして、最終的に事件と大きく関わってくる偉い先生なのですが、この人のキャラクターというのが、いかにも「意外性を出すために作った人物像」という感じなのです。そして、いくら「経験」があるとはいえ、「精神疾患が再燃したフリをする」なんていうような「演技」が、そんなにうまくできるわけないよ……そんなに簡単にできるものであれば、この世の犯罪者はみんな「責任能力なし」のフリをするに違いありません。
 なんだかね、とにかくいろんな意味で、「とにかく意外な話をつくること」が最優先されすぎて、リアリティがあまりにも希薄な作品だと僕には思えたのです。「物語」としては面白いのだけれど、その一方で、頭の片隅では「そんなわけねえだろ……」とずっとツッコミ続けずにはいられない、というような。

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