琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

カーテンコール ☆☆

カーテンコール [DVD]

カーテンコール [DVD]

東京の出版社で働く香織は、雑誌に掲載したスクープ記事が原因でしばらく福岡に異動することになった。彼女が行くことになったのは、福岡のタウン誌での仕事。そこで“懐かしマイブーム”を担当することに。読者からのハガキを読んでいると、1通が目に留まる。そこには、昭和30年代後半から40年代中頃にかけて、下関の映画館・みなと劇場にいたある芸人のことが書かれていた。興味を覚えた香は、福岡から近い下関へ取材に行く。また下関は、父親がひとりで暮らしている香織の故郷でもあった。みなと劇場へ訪れた彼女は、そこで昭和33年から今までずっと働いているという女性、宮部絹代に出会う。そして、絹代から幕間(まくあい)芸人として人気のあった安川修平の話を聞くのだった。

チルソクの夏』『四日間の奇蹟』の佐々部監督が、三度、自身の故郷である下関を舞台に描く人間ドラマ。場内整理から、ビラ配り、フィルム運びなど、どんな仕事も熱心にやっていた青年、安川修平。彼は、ある日、フィルムが切れる事故が起きたことから、上映を待つ観客のイライラをおさえるために舞台に立つ。 (「映画生活」のストーリー紹介より)

 このDVDのパッケージを某TSUTAYAで見つけたとき、「これは面白そうだな」と思いました。「幕間芸人」というのがどんな存在だったのか興味がありましたし。でも、観終わっての率直な感想は、「結局、何が言いたいの?これ……」というものだったんですよね。なんというか、テーマが分裂してしまって、前半部と後半部では、全く別の作品になってしまっているという気がしたのです。観てよかったなあ、というのは、前半部の藤井隆が演じている「幕間芸人」の姿だけで(藤井さんの好演がなければ、本当に「観るべきところが何も無い映画」だったと思います)、あとはもう、「何このベタな展開……」と唖然としてしまうくらいのクラシカルなストーリーの上に妙に政治的なテーマが塗りたくられていて、観ているのが辛かったです。

以下ネタバレです。
 途中で、安川修平が「在日朝鮮人」であることが明かされて、差別され続けてきた在日朝鮮人の戦後と安川修平の没落がシンクロしていくのですけど、正直、僕はこの作品は、「映画という文化の衰退と幕間芸人の悲劇」というテーマだけを描いたほうが、はるかに良い作品になったのではないかと思うのです。「在日」の問題を描くことに問題があるというわけではなくて、物語の中盤にいきなりそんなふうなテーマが出てくるのは、なんだかあまりに強引な印象を受けたので。いや、確かに戦後の「芸能」を語るには、「差別されてきた人々」の存在を避けては通れないのですけど、だからといって、この作品にとって、その要素が不可欠だったのかどうか?そして、その要素を入れるにしても、途中でテーマそのものが摩り替わってしまうようなやりかたには、ちょっとしらけてしまいました。
 ものすごく面白くなりそうな映画だっただけに、ちょっと残念。

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