琥珀色の戯言

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妖精が舞い下りる夜 ☆☆☆

妖精が舞い下りる夜 (角川文庫)

妖精が舞い下りる夜 (角川文庫)

博士の愛した数式』『ミーナの行進』などで知られる、現代小説のフロントランナーのひとり、小川洋子さんのエッセイ集。単行本として最初に出たのが1993年ですから。なんというか、瑞々しい若手作家の気概みたいなものがすごく伝わってくる作品になっています。人は、こうして「作家」になっていくのだなあ、とか考えてみたり。小川さんというのは本当に言葉をたいせつにしている作家であり、「テーマ」よりも「構築された世界の美しさ」を重視されているようなイメージがあるのですが、この本を読むと、その「ルーツ」みたいなものがすごく伝わってくるような気がします。そして、プロの作家と素人の間の「越えられない壁」みたいなものも感じます。

 でも、小川さんの『薬指の標本』に関するこんなエピソードには、驚かされました。

 ある文芸誌で「この人が何のために小説を書いているのか、さっぱり分からない」と酷評され、全人格を否定されたような気分に陥ったのを覚えています。全否定されながらも書くことをやめないとは、我ながらしぶといと思います。

薬指の標本 (新潮文庫)

薬指の標本 (新潮文庫)

薬指の標本』、僕はとても素晴らしい作品だと思いましたし、そこに「世界」があれば、「わかりやすい意味」なんていうのは必要ないんじゃないかという気がするんですけどねえ。でも、こういうのが載ってしまうのが「文芸誌」で、作家というのはそれに耐えていかなければならない職業なのだ、ということなのですね……

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