琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

タイアップの歌謡史 ☆☆☆

タイアップの歌謡史 (新書y)

タイアップの歌謡史 (新書y)

 商品としての「歌」と「タイアップ」の歴史について書かれている本なのですが、読んでいて子供の頃に聴いていた曲名や観ていたCMがたくさん出てきて、とても懐かしい気分になりました。ただ、これだけの長期間の「歴史」をこれだけの厚さの新書にまとめたということもあり、「俯瞰的」なものに終始しているというのはちょっと残念です。なんというか、大学の一般市民向けの公開講座みたいな感じとでも言いましょうか。「とりあえず一通り流してみました」って雰囲気なんですよね。これらの曲を作っていた、歌っていた人たちの多くはまだ存命なのだから、もっと当事者の生の声を聞いてみたいな、とも思いますし、版権の問題なのでしょうけど、曲の紹介の際に、歌詞の一部でも引用されていたら、もっと心に響くのになあ、という気がしたのです。この本自体も興味深い内容ではあるのですが、もっと面白くて叙情的な本にできるはずなのに、勿体ない。資料的価値はあるのでしょうが、なんだか、「ネットで検索できるレベルの情報を整理してひたすらまとめただけ」という印象です。「Wikipedia」の記述っぽい、とでも言えばいいのかな……
 あと、資料的な価値を重視しているはずの本なのに、188ページの「谷村有実」(正解は「有美」)とか、205ページでJR東日本のタイアップソングとして紹介されている『DEPARTURES』『Can't stop fallin' love』がGLAYの曲になっていたり(実際はglobe)、僕が流し読みしただけでも、2ヶ所の誤植、誤認がありました。これは著者の速水さんの責任だけではなくて、洋泉社の校正の問題もあるのでしょうが……データを語るための本でこれでは、かなり興醒めです。いま粗製濫造されている「新書」って、こんなものなの?
 なんだか文句ばっかり書いてしまいましたが、それもこの本の内容が非常に興味深いものだから、なのですよね。とりあえず最後まで飽きずに読めたし。『ザ・ベストテン』は偉かったんだなあ、ということも再認識できました。

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