琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

「映画」と「演劇」

http://anond.hatelabo.jp/20070206162630

個人的には(映画に比べて)圧倒的なパイの小ささがメインストリーム足りえない理由だと思うな。

結局はそれに尽きる、ということなのでしょうか。
それにしても、ここで紹介されている「演劇の現状」という資料を見て、東京と地方との「文化的格差」というのはまだまだ大きいのだなあ、と痛感してしまいました。Amazon使えば、東京も九州の地方都市もそんなに変わらないじゃん、とか思っていたけれど、演劇では、ここまで東京に集中しているとは……「九州ウォーカー」の演劇コーナーを観て、面白そうなもの(しかも平日はムリ)を選んで行くくらいのレベルの「演劇ファン」の僕なのですが、東京ではこんなにたくさんの舞台が日々上演されているということに驚きです。「九州ウォーカー」の演劇コーナーは、「今号は載せる舞台が無いんだなあ……」という編集者の辛苦がときどき伝わってくるんですよね。
 そう考えれば、東京でも地方でも「ほとんど同じもの」が観られる「映画」ってすごいよなあ。入場料も同じだし。
 僕はこれを読みながら、「じゃあ、人気のある舞台を撮影して『上映』すれば、同じくらいの集客力があるのだろうか?」とか考えてみたのですが(実際に、舞台を映画化した作品はたくさんあるのですけど、それは「映画的」な脚色が加えられているものばかりです)、今までに何度か「演劇をそのまま収録してビデオ化したもの」を観た経験からすると、たぶんそれはヒットしないだろうなあ、と思います。映画として撮られた作品に比べると、どうしても舞台装置は安っぽいし、カメラワークはぎこちないし、ストーリーもわかりにくい。登場人物は「舞台喋り」ですし。演劇を観る楽しみのひとつって、主役たちが熱く愛を語っているシーンで、「余所見」をして舞台の端っこに佇んでいる役者の表情を窺ってみることなんですよね、僕にとっては。さらに、「視点」を自分で選べる喜びがなくなると、舞台の面白さはかなり失われてしまいます。あと、演劇の観客であるというのは、その「祭り」に参加している、ということでもあるのです。映画の場合は靴を脱いで脚を前の席に投げ出して観ている人がときどきいますが、演劇って、観客側も「舞台から観られている」ような感じがすごくするのです。だから、重厚な作品を観終わったあとは、すごく疲れてしまいます。もちろんそれは、心地よい疲れではあるのですが。

「演劇がなぜメインストリーム足りえないのか?」という点に関しては、「パイの少なさ」はもちろんなのですが、「演劇をやる側」になったとして考えると、「演劇のメリット」っていうのは、(1)映画みたいに作品を作るのにお金がかからない(2)そのわりには不特定多数の人に見てもらえそう(3)お客さんのナマの反応が感じられる、といったところでしょう。そして、映画の場合は「制作にお金がかかる」ために、どうしても「失敗しないような作品」に流れがちになるのです。前衛的なことにチャレンジしたいのは若い人のほうが多いはずですが、お金がかかる映画制作の現場では、「ワガママを言えて、自分が好きなものを撮れるのは、実績のある大物監督だけ」になりがちなんですよね。そりゃあ、お金を出す立場からすれば、「無名の人間が撮る前衛的な作品」になんて、怖くて投資できません。ところが、演劇の場合は、そういう「前衛的なことをやりたい若い人」でも、がんばればなんとか上演にこぎつけられるくらいの費用です(もちろん、作品によってはヘタな映画よりよっぽどお金や時間がかかっているものもありますが)。「圧倒的にパイが小さい」がゆえに、「登竜門」であったり「実験場」であったりすることが可能なわけです。必然的に「どうしようもない作品」の割合も多くなるのでしょうが。演劇をやる人には、「いつかは映画を撮りたい」「きっとテレビの連続ドラマの主役になってみせる」という人から「とにかく舞台の緊張感が好き」「舞台のほうが自分のやりたいことがやれる」という人まで、たくさんのタイプがあって、一概に言えるようなことではないのかもしれませんが、「アメリカの演劇市場は日本の約3倍の4000億円」なんていう数字を見ると、「日本の演劇って、けっこう頑張ってるんじゃないの?(とくに東京は)」とか僕は感じてしまいました。

 ところで、これを書きながら思ったのですけど、もしかしたら、今ブログを書きまくっている人の中には、もし一昔前に生まれていたら、肥大しまくる自意識を持て余して舞台に上がっていたはずの人がけっこういるかもしれませんね。

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