琥珀色の戯言

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リトル・バイ・リトル ☆☆☆

リトル・バイ・リトル (講談社文庫)

リトル・バイ・リトル (講談社文庫)

 島本理生さんがこの作品で20歳のときに史上最年少の野間文芸新人賞受賞者となった際には、けっこう話題になったものでした。今となっては、綿矢りささんと金原ひとみさんの登場で、「万年芥川賞候補化」しつつあるような気もするのですけど。
 この『リトル・バイ・リトル』非常に巧い作品だと思います。とても20歳が書いたものとは思えない一方で、20歳にしか書けない作品のようでもあり。島本さんの「流れるように読める」文章というのは、この当時からだったんですね。
 ただ、僕はこの作品に関しては、細かいところに気になるところがいくつかあって(ネタバレになるので、後で隠して書きますが)、あまりのめりこめませんでした。周というキャラクターもリアリティがないというか、いかにも「少女マンガに出てきそうな不器用な男の子」という感じで、現実にはこんなヤツいないだろ、と。『ナラタージュ』もそうなんだけれども、島本さんの描く世界って、「オッサンたちがイメージしているような若い女の子の世界そのもの」なんじゃないかなあ、と僕は感じます。同世代にとっては、「何この古めかしい話」って思われているのではなかろうか。これなら、矢沢あいのマンガとかのほうが、はるかに説得力があるんじゃないかな。でも、オジサマたちは少女マンガは読まないから、これを読んで「現代の若い女の子」をわかったような気になる、と。
 まあ、悪い作品ではないんですけど、島本理生さんは、ちょっと「文学的優等生」にすぎるのではないかな、とちょっと思いました。
 そうそう、この表紙の写真、すごく印象的ですよね。
 あと、巻末の原田宗典さんの「解説」はすごく良かったので、何か自分で書いてみようと思う人は、立ち読みででもぜひ読んでみてください。

 以下ネタばれの「気になったところ」

(1)電気屋でウォークマンを買った10代後半の男が、それを「自宅に配達してもらう」わけないよ。そのまま持って帰るに決まってる。

(2)周のしゃべり方が気持ち悪い。真面目て不器用って設定なんだろうけど、『龍が如く』の桐生一馬みたいになってます。あんなしゃべり方する高校生いないって。初対面のときだけならともかく……

(3)初心者どうしのセックスがいきなり青姦とかありえねえ。そんなのうまくできるわけないし、男も女も、あるいはどっちかがイヤに決まってるだろそんなの。

(4)というか、セックスですべてを解決しようとしてしまうというのが『ナラタージュ』で僕が最も気に食わなかったところなんだけど、島本さんってデビュー作からそういう作風なんですね。正直、最後のほうは、「で、いつヤルんだこいつら」という下品なことしか考えられなかったのですけど。文学風レディコミ?

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