琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

地下鉄に乗って ☆☆

いつもと同じ会社からの帰り道。地下鉄を降りて駅の階段を上がると、そこはオリンピック開催に沸く昭和39年の東京だった―。真次(堤真一)に突如訪れた、現実とも夢とも信じがたいタイムスリップ。真次は恋人みち子(岡本綾)とともに過去へ戻り、そこで若き日の父(大沢たかお)とその恋人お時(常盤貴子)出会う。時空を超える旅を続けるうちに明らかになる、父の真実の姿。そして真次とみち子との間に隠された、驚くべき秘密。それは、二人の愛に過酷な選択肢を突きつける、あまりにも切ない運命だった…。

 ロンドン行きの飛行機の中でウトウトしながらこの映画を観たからなのかもしれませんが、僕はこの作品を観ながら、「なんだかすごく感じ悪い映画だなあ」と思っていました。原作は読んだことないのですけど。
 タイムスリップ、親の愛、不倫、戦争……と、「泣かせる要素」をパッチワークのように寄せ集めて作られているにもかかわらず(だからこそ、なのか?)、観ていて感じるのは「御都合主義」と「説教くささ」そして、「岡本綾って中村獅堂と不倫してたよなあ。なんか不幸そうな雰囲気の女優さんだ……」というようなことばかり。浅田次郎さんはすごい作家だと思いますし、『蒼穹の昴』は今まで読んだ本のなかでベスト10に入る大傑作として大事に保存しています。『壬生義士伝』は、読んでいて電車の中で涙が止まらなくなってしまっって困りました。でも、なんなんだこの話は。最後の主人公にとってだけ最高に都合のよい「解決法」も含めて、どこで感動しろって言うのでしょうか。原作もこんなに酷かったの?
 この映画にとっての「救い」は、堤真一さんの熱演だけでした。他のすべてがショボイだけに、かえって堤さんがかわいそうになってきましたけど。こんな安直な「感動押し売り作品」を観る時間があったら、『フラガール』とか『ゆれる』とかを観るべきです。

蒼穹の昴(1) (講談社文庫)

蒼穹の昴(1) (講談社文庫)

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)

壬生義士伝 上 (文春文庫 あ 39-2)

アクセスカウンター