琥珀色の戯言

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ハッピーフィート ☆☆☆

http://wwws.warnerbros.co.jp/happyfeet/

皇帝ペンギンのメンフィス(ヒュー・ジャックマン)とノーマ・ジーン(ニコール・キッドマン)夫妻に、息子のマンブル(イライジャ・ウッド)が誕生。生まれて間もなくしてパタパタと足を動かす妙な癖を披露したマンブルは、その後立派な小学生に成長する。しかし、ペンギンにとって大事な歌の授業中に、音痴であることが発覚してしまう。 (シネマトゥデイ

 アカデミー賞長編長編アニメーション映画賞を受賞した「踊るペンギンムービー」。
 最初は、これ『皇帝ペンギン』のアニメ版なの?と思わせておいて、途中からは「歌えないけど踊ってしまうマイノリティペンギンの自分探し物語」になっていくのですが、ストーリーはかなりベタベタです。最近のアニメ映画って、「仲間と違うためにいじめられたり差別されたりする個体が群れを離れ、そこで新しい『仲間』を得て、新しい自分の存在意義を見つけていく」という話ばっかりです。とはいえ、この『ハッピーフィート』は、最後にもうひとひねりされているのですが、それが、日本人的な観念に生きている僕にとっては、なんだか「明るく描こうとすればするほど、薄っぺらく、うそくさくしか思えない結末」なんですよね。むしろ、そういう教条的な部分がないほうが、素直に楽しめる良質のエンターテインメント映画として完成されていたのではないかなあ。そこは非常に残念です。
 あと、マンブルとアミーゴス以外のキャラクターにあまり魅力を感じなかったんですよね。とくにヒロインのグロリアって、あまりに優等生すぎて、まったく面白みがないんだよなあ。

 しかし、映像と音楽は文句なしにすごい作品ではあるんですよね。水中でアザラシから逃げるシーンのスピード感、そして、ペンギンたちの群舞のシーンは、その圧倒的な迫力に息を呑んでしまいます。映像、音楽は一見の価値がある作品なのですが、やっぱりストーリー、それも最後の30分くらいがねえ……

以下ネタバレなので隠します。

 僕はむしろ、「マンブルが力尽きて死んでしまったのを見て人々が環境問題を考える」くらいにしておいたほうがよかったんじゃないかと思うのです。「動物園で見世物にされて心を失ってしまった場面で終わる」のがいちばんリアルかもしれません。この作品は、安易に「救い」を作ってしまっていて、その救いが「人間サマのお情け」である点が、まさにアメリカ的で「ハッピー・エンド」のはずなのに、観終えてすごく不愉快になってしまうのです。この映画の世界観では、人間は絶対的な存在=神であり、結局、ペンギンたちは、哀れな「神にすがるしかない生き物」なんですよ。踊ってみせて慈悲を請わなければならない。じゃあ、最後にペンギンたちにもてあそばれて食われる魚たちはどうすればいいのか?ペンギンたちは踊れるカワイイ生き物、知能が高い生き物だから保護される権利があるのか?そもそも、魚を獲っている人間たちだって、「生きるため」にやっているのではないのか?
 これを素直に受け入れて感動できる子供が多いのだとすれば、アメリカは病んでいるというか、あまりに自信過剰なのではないかな、と思います。子供向けアニメ映画だから「ハッピー・エンド」にしなければならないのかもしれませんが……
 それでも、これを観て、「ペンギンたちを助けるため」に環境問題に関心を持ってくれる子供が増えるとすれば、それはそれで結果オーライ、なにかもしれませんけど……

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