琥珀色の戯言

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さくら日和 ☆☆☆

さくら日和 (集英社文庫)

さくら日和 (集英社文庫)

 言ってみれば、まさに「毒にも薬にもならない」気軽に読めるエッセイ集で、まさに「さくらももこの真骨頂」であるこの本なのですが、先日『名もなき毒』を読んだばかりなので、ここに書かれている、さくらさんの「お世話になった担当編集者をねぎらうためのサプライズパーティー」とか、「有名芸能人との飾らないお付き合い」なんていうのは、読む人によっては、「売れてるからって、成金チックで嫌な感じ」と受け取られることも少なくないのではないかなあ、と思いました。しかし、この人のすごいところって、ある意味、そういう「クリエイターとしての苦しみ」みたいなものをほとんど表に出さないところなのかもしれませんね。一番心配しているのが「息子バレ」だものなあ(もうバレてしまったらしいですが、息子さんはそのとき、どんなリアクションをしたのでしょうか?)。
 最初のころのインパクトはないけれど、春の日にうたた寝とかしながら読むのには、ものすごく良い本なのではないかなあ、と思います。しかし、さらっと書いているように見えるけど「お姉さんと酔っ払って浄水器のフィルターの汚れ具合を確認するために浄水器の容器とノコギリで切った話」なんていうのを1本のエッセイに仕上げるなんていうのは、誰にでもできることではないよなあ。

 ところで、この本のなかで、僕が気になったところ。

 このモチを食べながら、近くでモチつきをしている人達の姿が見えるなんて、魚の泳いでいる水槽を見ながら食うスシのような贅沢さである。

 うーん、僕はあの「寿司屋にある、魚が泳いでいる水槽」ってダメなんですよ。前を通るときには、ついつい伏し目がちになってしまいます。僕は感情移入と擬人化が過剰な人間なので、「自分があの水槽の中に入っている魚だったら……」とか、考えてしまうんですよね。
「あっ、仲間が食われてる……次はオレの番なのか?」
「ああ、狭いよここ……こんな怖い状況に閉じ込められているのなら、いっそのことひと思いに……」
 世間一般としては、やっぱり「魚の泳いでいる水槽を見ながら食うスシはいっそう美味しい」のでしょうか?
 「モチつきをしている人達の姿を見ながら食べるモチ」は、確かに美味しそうなんですけど……

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