琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

本気で小説を書きたい人のためのガイドブック ☆☆☆☆

 最近「本気で小説を書きたい人」である僕にとって、あの『ダ・ヴィンチ』の編集部が出した「ハウツー本」ということで、かなり期待して読みました。
 それで、結論から言うと、ハウツー本としては「月並み」だな、と。どこかで読んだような記事が多かったし、作家や編集者へのインタビューも、一人一人の分が短くて、あまり深くまで突っ込んで話を聞いているわけではないんですよね。もっとも、この手の本を腐るほど読んでいる僕としては「作家になった人の体験談をいくら読んでも、自分で何か書けるようにはなれない」という気がしているのですけど。むしろ、こういう本ばかり読んでいるので「小説書きハウツー本マニア」になりつつあります。
 ただ、この本の中にもいくつか役立つところはあるんですよね。「海外翻訳小説に学ぼう」という項などは、なるほどなあ、と思いました。少なくとも今の日本人を相手に書こうと考えているのならば、「現代の流行作家」ばかり読んでいても「二番煎じ」になってしまうのは明らかなんですよね。僕が読んでいる作家たちは、「古典」と呼ばれるような1900年前後、あるいは聖書や中国の歴史書、神話などをよく読んでいるようです。確かに翻訳小説とか昔の本って読みにくいものが多いのですが、時を超えて(あるいは「国境を超えて)読まれてきた本には、それなりの力があるのでしょう。とりあえず、みんなと同じ、面白くてわかりやすい本ばかりを読んでいてはダメなんだよなあ。「大事なのは、枝葉に行くことではなくて、源流を遡ることだ」と、ある有名読書系サイトにも書かれていましたし。
 この本は、「とっつきやすい作家志望者向けの本」ではあるのですが、どちらかというと「読んで小説が書けそうな気分になるだけの本」なのかもしれません。ただ、巻末の「新人文学賞格付け徹底ガイド」は「応募したい人」には、すごく有用なのではないかと。

 ところで、この本で印象に残ったものに、福田和也さんのこんな話がありました。
(作家という「職業」について)

 やっぱり僕の考え方としては、作家とはプロフェッショナルであるというのが前提にある。文章だけで生活し続けるというのは、大雑把に言うと他のことができない人しか生き残れないということ。あんまり例を出すと怒られちゃうけど、江國香織さんなんか1回だけレジ打ちのバイトをやったことがあって、そしたらレジ打つのが楽しくなっちゃって、誰も買物してないのにガチャガチャ打ち続けたと聞きました。柳美里さんなんか電車乗れない人ですからね。お書きになっているけど、乗ると必ず喧嘩になったりトラブルが起きて無事電車を降りたことがない。モノを書く意外でお金を稼いだことがない人でしょう。しかも物書きは終わりがないですからね。死ぬまでやらなきゃいけない。正宗白鳥が83歳で死んだとき、最後に言った言葉が「結局、才能以上のものを書くことはできない」。この言葉に小林秀雄が動揺したんです。努力すればなんとかなると言う人もいるけど、それはプロだから当然の話で、意地悪なことを言うけど9割9分の人はダメだと思う。

 どこまで本当の話かわかりませんが、柳美里さんって「すごい人」だなあ……ミノワマンより、「リアル・プロレスラー」だ……

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