琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

わたしはレンタルお姉さん。 ☆☆☆

わたしはレンタルお姉さん

わたしはレンタルお姉さん

 読み終えるのに1時間もかかりませんし、僕としては、「これで1200円っていうのは、コストパフォーマンス悪いよなあ」とは、思ったんですけどね。
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20070408#p1
↑で紹介した「新幹線ガール」みたいに、「こういう職業があることの啓蒙のための本」という印象もあって、要するに「あんまり本音の部分というか、悪い話は書けないんだろうな」と感じてしまいましたし。比べてみると「新幹線パーサー」のほうが写真もカラーだし値段も安いし(税込みで999円)、せっかくこんなふうに「啓蒙」するための本なら、もうちょっと安くするか内容を濃くしてくれたらいいのになあ。
 でも、こういう「レンタルお姉さん」という仕事があるのだ、というのが社会に認知されただけでも、それなりに意味はある本だと思います。後半はなんだか著者の川上佳美さんにお説教されているような気がしてきて耳が痛かったのですが(というか、この本のなかでいくらニートに説教してみたところで、ニートは読まないと思うんだけどさ)、この本を読んでいると「(多少強引にでも)環境を変えることの大切さ」とか、「ニートが暮らしていけるのは、結局のところ、周囲の人間の『保護』のおかげなのだ」ということがよくわかります。そして、「レンタルお姉さん」というと、言葉としてはちょっと性的なイメージも湧いてくるのですが、実際はそんな濃密な付き合いを個々のニートと結ぶわけではなくて、あくまでも「きっかけ作りのための仕事」なのだということも理解できます。しかし、「レンタルお兄さん」っていうのもいるんですね、それは初めて知ったなあ。

 1人のニートに、外に出て行く気を起こさせて、次のステップに移らせるまでの目安は1年。
 私は基本的に、こんなアプローチをしています。
 最初は手紙やハガキ。1通、1通手書きで、読んでもらえるように工夫をしながら、自己紹介やニュースタート事務局についての簡単な紹介などを書いて出します。週に1回の割合で、1ヵ月ほど出し続けることが多いです。
 次は電話。出てもらえないことも多く、あまり話しが弾むということはありませんが、電話に出てもらえたら、日常の生活の様子を聞いたり、訪問の予告などをしています。
 電話に出てもらえない場合も、最初の手紙から1ヵ月半から2ヵ月が経過したころには、初回の訪問をするようにしています。訪問は、近いところなら週1回、遠方なら月1回または月2回と、状況に応じた周期になります。

 訪問活動では、私に慣れてもらうことが先決で、警戒心が解けたら、一緒に外出したりもします。私1人ではなくだんだんと、他のスタッフや寮生などにも同行してもらい、「人との楽しいコミュニケーション」を重ねて、ある程度、安心感をもってもらえたところで、寮に入る、アルバイトを始める、学校へ戻るなど、目標とする次の行動を起こすように促して、本人がそれを行動に移したところで、私たちの仕事は終了となるのです(なかなか、そう順調にはいかないものですが)。

 僕は「レンタルお姉さん」の仕事というのは、もっと「ニートたちとの濃厚な人間関係」を築いていくものだと思い込んでいたのですが、かなり「システム化」されているのだな、という印象を持ちました。もちろんそれは悪い意味ではなくて、それぞれのスタッフの能力差がなるべく反映されないように、「誰かにすごく慣れさせる」のではなくて、「誰かをきっかけに、みんなに慣れさせていく」ようにしている、というところに感心させられたのです。

新幹線ガール

新幹線ガール

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