琥珀色の戯言

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ボッコちゃん ☆☆☆☆

ボッコちゃん (新潮文庫)

ボッコちゃん (新潮文庫)

星新一 一〇〇一話をつくった人

星新一 一〇〇一話をつくった人

↑を読んだ人の多くは、「星新一を再読してみよう!」という気分になると思うのです。もちろん僕もそうでした。
そこで、星さんの代表作のひとつである、この『ボッコちゃん』を読んでみたのです。
しかし、1971年発行の文庫が、田舎のTSUTAYAに平然と置いてあるんだから、やっぱり星新一はすごいですよね。

 そのロボットは、うまくできていた。女のロボットだった。人工的なものだから、いくらでも美人につくれた。あらゆる美人の要素を取り入れたので、完全な美人ができあがった。もっとも、少しつんとしていた。だが、つんとしていることは、美人の条件なのだった。

 有名な表題作『ボッコちゃん』の冒頭の文章なのですが、あらためて読んでみて感じたのは、「プロの作家、文章上手を自認する人は、なかなかこんなふうには書けないだろうな」ということでした。一文一文が短くて、描写がすごく抽象的なんですよね。「文学的」な文章を書こうという人からすれば、「完全な美人ができあがった」なんて書くのは「反則」というか、そんなふうに結論を書かずに、具体的な目がどうとか鼻がどうとかを積み重ねて、読者に「美人」だと感じさせるのが「文学」だろ?と全否定されてしまうような文章です。でも、この文章には具体的な描写がないだけに、確かに、読んだ人は自分で「美人でつんとした」ボッコちゃんを思い描くことができるんですよね。こんなふうに書かれてしまうと「それは美人じゃないのでは…」と否定しようがありません。
 僕が中学生くらいに星新一さんを読んでいたときには、この「凄み」はいまひとつ分からないままストーリーの面白さに魅かれていたのだと思いますが、今、あらためて読み返してみると、この「文体」「表現方法」って、星新一さんの「個性」ですよね。
 
 この『ボッコちゃん』のなかで最も印象に残ったのは、最後に収録されている『最後の地球人』という作品でした。ちょっとネタバレになってしまうのですが、この「最後の地球人」が知っていた「やるべきこと」というのは、いったい何だったのか?
 僕はそれをずっと考えているのですが、いまだに答えが出ないのです。

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