琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

本や映画の「感想」は役に立たない?

愛・蔵太の少し調べて書く日記 - 慰安婦米軍命令の誤記事について
↑の記事のメディアリテラシーについての部分も興味深いのですが、僕が考えさせられたのは、最後のこの部分でした。

 本とか映画の感想でもそうですが、「こんな風に感じた」という感想よりも、「こんな本・映画があった」という部分での情報提供のほうが、ぼく自身は役に立つ場合が多いんですが、みんなはどうなんでしょうか。

 この前者を「感想」、後者を「紹介」とするならば、単体としてどちらが役に立つかと言われれば、やっぱり「紹介」なのかな、と僕も思います。「感想」っていうのは、書いている人の「主観」でしかないわけですし。逆に「有名人の感想」であれば、それは立派な「看板」にもなりえるのですが。

十数年前。高校時代。恋人の死。「喪失感」から始まる魂の彷徨の物語。落ち葉の匂いのするファーストキスではじまり、死を予感させる無菌状態の中でのキスで終わる。

という「内容紹介」よりも、

泣きながら一気に読みました――柴咲コウ

のほうが、はるかに多くの人に「この本を読みたい!」という気持ちを起こさせたわけですしね。

 僕はときどきこのブログの中で、読んだ本のことを取り上げて「感想」を書いているのですが、書いていて最も嬉しいときっていうのは、「このブログで紹介されているのを見て読みました(読んでみようと思いました)」って言ってくれる方がいたとき、なんですよね。別にそれで僕自身が儲かるというわけじゃないのですが(厳密に言えば、クリックしてamazonで買ってくれればちょっとだけ儲かるのですが、僕にとっては、そういうのは些細なことです)、とくに☆4つとか☆5つをつけているものは、「こうして世界の片隅で僕が感想を書くことによって、この素晴らしい本を手に取ってくれる人がひとりでも増えて、著者が少しでも潤って、誰かが読んだ感想を僕に(間接的にでも)聞かせてくれればいいなあ」と思っています。本当は「書評」ができればいいのだろうけれども、本物の「書評」というのは、その作品・作家・ジャンルに対する知識の蓄積と愛情がないとできないものなので、僕には無理。

 僕が「感想」を書くことにこだわっているのは、僕自身は、あまり「紹介だけ」とか「書名の羅列だけ」っていうのを面白く感じないから、でもあるんですよね。「感想」といっても、「面白かった」「オススメ」だけしか書かれていないと、やっぱりなんだかピンと来ませんし。そもそも、その人と僕との好みの違いがわからなければ、その人の「好き」「面白かった」だけで盲信はできません。そう考えると、「ブログで本を紹介して、誰かに読もうと思ってもらう」ためには、そのブログの管理者のキャラクター込みで売り込まないといけないんですよね。逆に、紹介している人に好意を持っていたら、「面白い」だけで読んでしまう人もいるかもしれません。恋人に「これ面白かった、読んでみなよ」って言われたら、とりあえずみんな読んでみますよね?

 いろいろ試行錯誤してみた結果、今のところは、「内容紹介」+「印象的だったところの引用」+「僕の感想」で、本に関するエントリは書いています。もちろんそれがベストではないのでしょうが、「紹介」だけでは読み流されるし、「感想」だけではわかってもらえない。でも、正直なところ、今の形式でも「何か足らない」と、ずっと考えてはいるのですが。

 僕はid:lovelovedogさんが「感想」じゃなくて「紹介」(「情報提供」)のほうがいい、って言われる理由、わかるような気がするのです。それはたぶん、こういうことじゃないかなあ。

 フランス料理の店に入ったとして、メニューを見せられたとします。フランス料理に慣れていない人は、まず、「この中で『おいしい料理』はどれだろう?」と考えると思うんですよ。そして「どれがよく注文されてる?」「どの料理がオススメ?」と店員に聞きます。他の人から情報を集めるときも「何が美味しかった?」って聞くはずです。
 ところが、フランス料理に慣れている「通」の人にとっては、そういう「他人の主観」は「単なる雑音」だったりするわけです。彼らは店員にこんなふうに尋ねます。「この料理は、どんな食材を、どういうふうに調理しているの?」と。それでだいたいの味はイメージできるし、そのほうが「通」にとっては、「よりノイズが少ない、自分が食べたいものへの近道」なんですよね。

 つまり、この世の中の大部分を占めている「本はときどきしか読まない」「面白い本を読みたいけど、どれを読めばいいかよくわからない」人にとっては、「感想」を積み重ね、分析していくことは十分有用ですし、id:lovelovedogさんのような「本に精通している人」「自分の好みが自分でわかっている人」にとっては「こんな内容の本があって、誰それが書いている」という「情報提供」のほうが、「他の人の感想」よりも「役立つ情報」であるということではないでしょうか。

 僕自身は、「感想を参考にしている」というよりは、「自分が読み終えたあと、他の人と感想を共有する」のが好きなんですよね。だから、みんなもっと「感想」を書いてくれば嬉しいです。面白かった本をリンクしているブログを「はてなダイアリー」で辿っていっても、「今日買った本」とかでタイトルだけが並んでいるところばかりだと、なんだかとても寂しい。


 ところで、蛇足なんですがあらためて考えてみると、

泣きながら一気に読みました――柴咲コウ

 って、すごいキャッチコピーですよね。これだけの言葉のなかに、

泣きながら→涙が出るほど感動できる
一気に読みました→ノンストップで読めるほど面白い
柴咲コウ→あの柴咲さんも読んだ!

 という強力な売り文句が濃縮されているのだものなあ。

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