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数え切れないくらい観た映画ではあるのですが、やっぱり僕はこの映画大好きです。
僕にとっての宮崎駿作品の「双璧」は、『カリオストロの城』と『風の谷のナウシカ』なのですが、この『紅の豚』は、その2作に次ぐ作品なんですよね。宮崎駿監督がすごく愉しんで作ってるのが伝わってきます。
世間的には、『ラピュタ』とか『魔女の宅急便』とか『トトロ』とか『千と千尋』とかのほうが高評価なのでしょうが、この『紅の豚』には、「俺はこういうヒコーキ野郎の話が好きなんだよ。理屈じゃない、とにかく好きなものは好き!」という「男のワガママ」がこめられています。そもそも、宮崎駿監督でなければ、「豚の飛行機乗りの話」なんていう映画が撮られた可能性は皆無だったでしょうし。
宮崎作品のなかでは『カリオストロの城』と並んで、「テーマなんて無い」「説教臭くない」作品です。そして僕は、この映画を観るたびに、もう「文部省推薦」の超大作しか作ることを許されなくなってしまった宮崎駿の不幸を思ってしまうのです。
戦争で稼ぐヤツは悪党だが、稼げない賞金稼ぎは能無しさぁ
『紅の豚』を観ていると、宮崎駿という人は、「戦争は嫌いだけど、決闘は大好き」あるいは「戦争ごっこは大好き」な男の子だと思うんですよ。平和主義者っぽいイメージがあるけど、全く「無防備マン」とは極北のところにいる矛盾の人。
押井守さんが、著書『立喰師、かく語りき。』のなかで、こんな辛辣な宮崎駿評を書いておられます。
押井:この間の『ハウルの動く城』だって、「CG使ってないんだ」って宮さん(宮崎監督)は言い張ってたけど、現場の人間は使いまくってるよ。あの人が知らないだけだよ。まるきり裸の王様じゃないか。それだったら、自分の手で(CGを)やったほうがよっぽどましだ。いや、わかりやすくて面白いから、つい、宮さんを例に出しちゃうんだけどさ(笑)。
いかに中性洗剤使うのやめたって言ったところで、結局は同じことじゃない。宮さん、別荘に行くとペーパータオルを使ってるんだよ。そのペーパータオルを作るために、どれだけ石油燃やしてると思ってるんだ。やることなすこと、言ってることとやってることが違うだろう。そこは便利にできてるんだよね。自分の言ったことを信じられるってシステムになってるんだもん。
しかしながら、「聖人君子」ではない、こういう「生臭さ」こそが宮崎駿監督とその作品の魅力だし、こういうのって、現代の「先進国」で生きる人々がみんな抱えている矛盾そのものなんですよね。
あと、この映画で僕がいちばん好きなのは、エンディングのフィオの独白のあと、『時には昔の話を』のイントロが静かに流れはじめるところです。この場面の「余韻」にいつも感動して、そんな立派な思い出もないのに、なんだか涙が出そうになるのです。
- 作者: 押井守
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