琥珀色の戯言

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アッシュベイビー ☆☆☆

アッシュベイビー (集英社文庫)

アッシュベイビー (集英社文庫)

蛇にピアス』を凌ぐ衝撃の第2作!赤ん坊、変態、好きな男。主人公アヤはこの三人に囲まれ、ただひたすらに愛しい死を求め続ける。愛しい死、それは愛する人の与えてくれる死。彼女は今日も死を待っている。

 うーん、この小説の押し迫ってくるような文体の迫力には、僕も圧倒されてしまったのです。『蛇にピアス』のときも思ったのだけれども、この小説で描かれている世界そのものは、僕にとってはまさに「不快」でしかないのですが、それでも最後まで読まされてしまったところが金原さんの力量の凄さなのだと思います。
 内容はつまらないというかとても不愉快だとしか言いようがない、でも小説としては優れているのです、たぶん。こういうのが女性の「本心」なんだろうかと、ちょっと怖くなります。まあ、人それぞれなんだろうし、こういう女性に愛される機会は僕にはないでしょうけど。
 「リストカット」「小児性愛」「嬰児虐待」
 このようなキーワードに対して「そんなの読みたくない!」と拒絶反応を起こしてしまわない人にとっては、オススメしても良い小説なのだと思います。しかし、「小説はモラルに縛られてはいけない」と思う一方で、僕自身はあまりにモラルを逸した小説にはついていけないし、これを賞賛する人に対しても、「いくら作り話でも、これを認めるのか?」と疑問になるのは事実です。瀬尾まい子さんの小説は「優等生すぎる」なんて批判しているにもかかわらず、実際にこの『アッシュベイビー』のような小説を突きつけられると「これを認めてもいいの?」と苦虫を噛み潰してしまう僕の中途半端さよ。
 「もっと『普通』の話を書けばいいのに」「本当にこの人はこんな話が『書きたい』の?」などと感じてしまうところが、僕の「小説読み」としての限界なのかな、という気もしてきます。

 しかし、これに比べたら『蛇にピアス』は、「ごく普通に受け入れられる小説らしい小説」ですよね……

蛇にピアス (集英社文庫)

蛇にピアス (集英社文庫)

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