琥珀色の戯言

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イキガミ(1)(2) ☆☆☆

イキガミ―魂揺さぶる究極極限ドラマ (1) (ヤングサンデーコミックス)

イキガミ―魂揺さぶる究極極限ドラマ (1) (ヤングサンデーコミックス)

「国家繁栄維持法」。この法律は国民に「生命の価値」を再認識させることで国を豊かにすることを目的とし、その手段として若者たちを対象にしたある通知を出している。その通知とは「逝紙(いきがみ)」と呼ばれる死亡予告証である。 およそ1000分の1の確率で選ばれた者は、紙を貰ってから24時間後には死んでしまう…。

この物語は死の命令を受けた者たちの残された運命を描くドラマである。 元ネタは星新一の原作「生活維持省」が基礎になっている。(Wikipediaの「ストーリー紹介」より)

 「死」というものを安易に突きつけて泣かせようとする「あざとさ」を感じてしまうマンガではあるんですけど、こういう話って、読んでいると確かに心を揺さぶられるものがあります。まあ、本当に「社会秩序の維持」を目的とするならば、「死亡24時間前の告知」っていうのは必要ないような気もしますが。かえって、エピソード1のような「復讐のための時間」を与えてしまうだけでしょうし。
 僕が今回読んだ(1)(2)巻のエピソードは、どれも、そんなに驚くほど斬新な物語ではないのですけど、Episode3の「純愛ドラッグ」は、読んでいてちょっとだけ泣いてしまいました。いや、登場人物が死ぬことにではなくて、「恋愛」というものの「一方通行性」に。「愛し合っている」っていうけどさ、僕も自分のことしか考えずに恋人に辛くあたったりしてきたわけで、わかっているつもりで、実際は「恋人から見て、自分はどんなふうに見えているのか?」というのは全然意識していない。いくら僕が仕事がうまくいかなくて落ち込んでいたとしても、相手にとっては「自分には責任のないこと」なんですよ。自分では「愛し合っている」つもりでも、結果的には「お互いに自分の都合を押し付けあっている」だけなのかもしれない。そして、僕たちが考えている「人生の優先順位」ってヤツは、常に間違っているのではないか、と。
 このマンガって「極限の特殊な世界で死の意味を問うている」ように多くの読者には思われるのかもしれませんが、病院で働いていると「人間っていうのは、いつ突然死んでしまうかわからない生き物なのだ」と感じずにはいられないのです。癌で緩やかに「死んでいく」人がいる一方で、心臓病や脳出血、交通事故などで、多くの人が「最後の晩餐もなく、遺言もないまま」亡くなっています。1000分の1の確率ではないとしても、僕たちはいつでも「いつ爆発するかわからない爆弾」を抱えている。
 ただ、「だから常に必死に生きろ!」なんていうのも、もう今の僕には「ありきたりの人生訓」にしか思えないし、ずっと全力疾走していたら、身も心ももたないのはわかっているのですが……

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