- 作者: 小峰元
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/09/16
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
「アルキメデス」という不可解な言葉だけを残して、女子高生・美雪は絶命。さらにクラスメートが教室で毒殺未遂に倒れ、行方不明者も出て、学内は騒然!大人たちも巻き込んだミステリアスな事件の真相は?’70年代の学園を舞台に、若者の友情と反抗を描く伝説の青春ミステリー。江戸川乱歩賞受賞作。
「この小説との出会いが、本嫌いだったバカ高校生の運命を変えた」――東野圭吾
この本が復刊されたひとつの要因としては、今をときめく人気作家である東野さんのこの言葉が大きかったのではないかと思います。
僕もたまには「古典」を読んでみようということで、この本を手にとってみたのですが……正直かなり読むのが辛かったです。
基本的に、推理小説としての意外性は謎解きに関しては、とくに驚くべきようなところはなくて、「こんなに計画通りにうまくいくわけがないだろ……」しかもその計画そのものも「かなりの幸運が必要」なレベルだし……という感じなんですよね。
今回再録されている、1974年の文庫版での「解説」を読むと、
選後評として、審査員たちは一様に、この作品の小説としての出来栄えや面白さを認めながらも、謎の小粒であることや、推理小説的骨格の弱さを指摘していた。私としても、それは認めざるをえない。
とかなり率直に書かれていますし。
ただ、この作品がまさに当時の「時代の寵児」であり、歴史に残る作品であることは間違いないようです。巻末の香山ニ三郎さんの「復刊のための解説」では、
直木賞作家東野圭吾が作家を志すきっかけにもなったというその『アルキメデスは手を汚さない』であるが、それまでの江戸川乱歩賞受賞作と比べ、大きくふたつの点で画期的な作品となった。
ひとつは、乱歩賞の名を一躍世に広めた仁木悦子の第三回受賞作『猫は知っていた』をもしのぐ一大ベストセラーとして。もうひとつは、日本ミステリーの中でもいまなお人気の高いサブジャンル”青春推理”のパイオニアとして。
と書かれています。ちなみに、2006年の復刊時のデータでは、単行本は1995年の受賞作『テロリストのパラソル』(藤原伊織)に抜かれるまで、歴代乱歩賞受賞作のトップで、文庫本はいまだに第1位(65万部)なのだそうです。
「内藤君は愛情がなければセックスしない側の人間ですよ。あなたとは反対側の人間なんだ。見損なっちゃいけない。復讐のために美雪君を犯す人間は、あなたと同じような考え方をする側の人間だと思いませんか」
いや、正直いま僕がこの本を読んでも、「こんな生意気というか気色悪い言葉が並んでいる高校生たちの話がなんでこんなに売れたんだろう?」という感じなんですけどね……「こういう作品が熱狂的に受け入れられた時代があった」ということを知る意味では、非常に有意義な作品なのかもしれませんが、やっぱりいまこれを「当時の記憶」がない僕が読むのは辛かった……
しかし、この作品を支持していた若者たちが、現在ちょうど高校生くらいの子どもの親なのか、と思うと、彼らが「いまの子どもたちは『親や学校の言うことを聞かない』」と責めるなんておかしいですよね。ほんと、人って昔のことは忘れちゃうんだなあ。