琥珀色の戯言

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『スウィーニー・トッド』感想 ☆☆☆☆


『スウィーニー・トッド』公式サイト

 作品の舞台は19世紀のロンドン。デップ演じるベンジャミン・バーカーは理髪店を営みながら、美しい妻、可愛い娘と幸福な生活をおくっていた。

 ある日、彼の幸せをねたんだ悪徳判事によって無実の罪を着せられ、監獄へと送られてしまう。妻も娘も奪われた彼は15年後、脱獄を果たし「スウィーニー・トッド」と名前を変えて街に戻ってくる。

 再び開いた理髪店で、商売道具のカミソリを手に、スウィーニー・トッドの復讐(ふくしゅう)が始まる……

 まさに、ティム・バートン節全開!という感じの作品です。すごくよくできたミュージカル映画だと思うし、ジョニー・デップの「色気」も伝わってくるのですけど、たぶん、観る人によってものすごく好みが分かれる作品でしょう。ミュージカル映画として、純粋に映像と音楽の完成度の高さに酔いしれることができる人には(あるいは、こういう「悪の美学・滅びの美学に魅かれる人には)この上ない大傑作のはず。でも、いろいろと現実的な想像をしてしまうと、かなり「生理的に不快」なんですよねこれ。「怖い」っていうより、「気持ち悪い」。前半は、「こういう『ちゃんと憎める悪役』がいる映画というのはスッキリしていていいよな」と思っていたのですが、途中からは、まさに狂気の世界に。これだけ登場人物に対して全く感情移入できない映画というのも、ある意味すごいです。

 公開2日目の夕方からの上映を観に行ったのですが、客入りは3割程度。あれだけテレビでも宣伝しているし、ジョニー・デップの新作なのに、日曜日の夕方+日本ではあまりウケないミュージカル映画だからって、ちょっと少ないな……と思ったのだけれど、観終えた人たちが軒並み唖然としていたのがすごく印象的でした。いや、たぶん僕も同じ顔をしていたんだろうけど。
 この作品、ジョニー・デップが出ていなかったら、日本でこんなに大規模に公開されていたかどうかも怪しそうです。

 殺人鬼を演じた際の気持ちを聞かれ、「スウィーニー・トッドを邪悪だとは思わなかった。彼は被害者だ。判事によって自分のすべてを奪われたとき、彼は死んだのだと思う。その後の彼は復讐(ふくしゅう)のためだけに生きていた」とデップ。

 とジョニー・デップは語っていて、その「復讐」に関しては僕も共感できるのですが、そのプロセスの部分が、さすがにこれはちょっと……という感じなんですよね……動機はわかるんだけど、そこまでエスカレートしちゃうと付き合いきれないというか……

 ある意味、すごく「美しい映画」だとは思いますし、僕はけっこう好きです。
 でも、この映画が大好きだという人とお友達になるのは抵抗があるなあ……

 ところで、この映画、15歳以下は観られないのですが、観終えて、「高校生はOKなのか……」と逆に驚きました。
 Wikipediaによると、各国のレイティングは、

アメリカ:R(for graphic bloody violence.)
イギリス:18
日本:R-15
韓国:18
カナダ:18A(ブリティッシュコロンビア州
オーストラリア:MA(15禁)
フィンランド:K-18
アイルランド:16

 日本の映倫というのは、残酷描写に関して「そのものが描かれていない場合」には、かなり寛容なほうみたいです。
 僕はとりあえず、しばらく床屋とハンバーガーショップ、焼肉屋には近づかないことにします。
 床屋って、いろいろ想像すると、本当に怖い場所ですよね……

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