琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

映画篇 ☆☆☆☆


映画篇

映画篇

出版社 / 著者からの内容紹介
物語の力が弾ける傑作!!
笑いと感動で胸が温かくなる傑作ぞろいの作品集。『ローマの休日』『太陽がいっぱい』など不朽の名作をモチーフに、映画がきっかけで出会った人々の友情や愛を描く。

 「ひとり本屋大賞」4冊目。
 僕は金城さんの単行本をはじめて読んだのですが、確かにこれは「傑作」であり、「物語の力」を感じさせてくれる作品集だなあ、と思いました。
 この本は5つの中編から成っており、なかでも僕が好きだったのは『太陽がいっぱい』と『恋のためらい/フランキーとジョニー もしくは トゥルー・ロマンス』。前者は、予想外のオチにちょっと面食らてしまいました。逆に、『ドラゴン怒りの鉄拳』『ペイルライダー』は今ひとつ。読みながら、僕は「女性が心変わりする話」と「子供が主人公の話」は嫌いなんだなあ、ということがわかりました。『ペイルライダー』あたりは、ここまで徹底して描ききってしまうところが金城さんの魅力なんだろうな、という話ではあるんですけどね。
 もし同じテーマで伊坂幸太郎作さんが書いたら、絶対ここまで徹底した復讐劇にはならなかったはず。
 好き嫌いはさておき、この作品集を読んで僕がいちばん印象に残ったのは、「とにかく日本人は『ローマの休日』とオードリー・ヘップバーンが大好き!」ということだったんですよ。
 僕にとっての『ローマの休日』って、ヘップバーン可愛いなあ、というくらいの「昔の映画」なのですけど、新婚旅行でローマの「真実の口」に行ってみて驚きました。
 「真実の口」は、サンタ・マリア・イン・コスメディン教会の入り口近くにあるのですけど、その前には、写真を撮ろうという日本人カップルが大行列!しかも、『ローマの休日』が公開された頃には絶対に生まれていなかっただろうと思われる若いカップルが大部分でした。
 そして、みんなやっぱり、グレゴリー・ぺックの真似をしてるんですよね(僕もやったけど)。

 『ローマの休日』をテーマにした時点で、この物語は「勝ち」のような気もします。それまでの4篇では、どちらかというと、「世間にうまく適応しきれない、映画好きの人々」の話だったのですが、最後の5篇目の『愛の泉』で『ローマの休日』が出てくることによって、この小説は、「映画というひとつの世界を共有して生きてきた、多くの人々の物語」になったのです。でも、いきなり『ローマの休日』では、あまりにありきたりな物語になってしまったはず。
 見た目はそんなに分厚い本ではないのですが、実際は350ページを超えるボリュームがあり、値段も消費税込みで1470円。
 最近の小説のなかでは珍しい、正統派の「現実に立ち向かう勇気が湧いてくる物語」として、「ひたすら生きにくさを描いた小説」に飽きてしまった人たちにお薦めしたい作品です。

 でもさ、ブルース・リーのブロマイドって……

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