琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

有頂天家族 ☆☆☆☆


有頂天家族

有頂天家族

内容紹介
第20回山本周五郎賞受賞第一作!著者が「今まで一番書きたかった作品」と語る渾身の作。偉大なる父の死、海よりも深い母の愛情、おちぶれた四兄弟……でも主人公は狸?!

時は現代。下鴨神社糺ノ森には平安時代から続く狸の一族が暮らしていた。今は亡き父の威光消えゆくなか、下鴨四兄弟はある時は「腐れ大学生」、ある時は「虎」にと様々に化け、京都の街を縦横無尽に駆けめぐり、一族の誇りを保とうとしている。敵対する夷川家、半人間・半天狗の「弁天」、すっかり落ちぶれて出町柳に逼塞している天狗「赤玉先生」――。多様なキャラクターたちも魅力の、奇想天外そして時に切ない壮大な青春ファンタジー。

「ひとり本屋大賞」6冊目。
 みんな大好き森見登美彦さんの作品なのですが、最初の2〜3話目くらいまでは、僕はこの作品あんまり面白いとは思えなかったんですよね。『夜は短し歩けよ乙女』の焼き直しみたいだなあ、という感じで。
 でも、後半の盛り上がりはなかなか凄かった。テーマはベタな「家族愛」なのですが、「狸鍋にされてしまった」4兄弟の父親のエピソードは、僕もかなりウルウルしてしまいました。個人的にはもっと過激な「復讐譚」になるべきなんじゃないかな、というか、親を喰った連中に対して、そんな鷹揚な態度でいいのかよ!とか言いたくなったのですが、結局のところ「狸と天狗と人間の世界」であるからこそ受け入れられる「世界」であり、それを作り上げた森見さんの勝ち、なのでしょうね。
 これがもし、「人間の家族の話」だったら、「いまどきこんな家族いねーよ」としか感じられなくて、僕はこんなに素直に読めなかっただろうし。
 最後、「これで終わり?なんかちょっと消化不良だなあ……」と思っていたら、ちゃんと続編もあるみたいなので楽しみです。

 しかし、今の森見さんのポジションというのは、非常に微妙なところにありますよね。
 全く今までと違う毛色の作品を書いたら、「こんなの森見さんらしくない!」って言われそうだし、さりとて、「森見さんが書いたとちょっと読んだらわかる作品」を書いたら、「二番煎じ、マンネリ」と言われてしまう。
 『有頂天家族』は、とても優れた娯楽作品だと思います。森見作品の特徴である、終盤に一気に畳み掛けるような盛り上がりは素晴らしいです。きっとこれが伏線なんだろうな、と思いつつも、実際にそれが登場すると、「待ってました!」と言いたくなるんですよねえ。

「面白きことは良きことなり!」
 「物語」としては、むしろこちらのほうが「完成度が高い」気もしますが、『夜は短し歩けよ乙女』の後に読むと、ちょっと「既読感」があるのは否定できないんですけど。
 

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