琥珀色の戯言

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ザ・万歩計 ☆☆☆☆


ザ・万歩計

ザ・万歩計

内容説明
万博公園に出現したオレンジ色の巨大怪鳥とは。係長から「マキメっち」と呼ばれるとき。「この世に存在するはずのない曲」への想い…。オニを遊ばせ、鹿に喋らせる、マキメ・マナブのマーベラスな日々を綴ったエッセイ集。

 『鴨川ホルモー』『鹿男あをによし』で大ブレイク中の万城目学さんの初エッセイ集。
 僕はこの本で万城目さんのエッセイをはじめて読んだのですけど、「この人はエッセイも上手いなあ」と感心してしまいました。大学卒業後「普通のサラリーマン」をやっていたときの会社の面白い人の話から、モンゴルを旅した(というか「短期居住した」ときの話まで、テーマもさまざまで(まあ、統一感がない、と言えなくもないですが)、読んでいて飽きません。
 「創作のきっかけ」の話や「作家志望で会社を辞めてみたけれど、なかなかうまくいかなかった時代の話」も、ものすごく興味深いものでした。
 読む側からすると、万城目さんというのは「彗星のように現れた新人作家」なのですが、「彗星」になるまでには、かなりの下積み時代があったようです。それにしても、作家というのは、いろんな経験を創作のきっかけにするものなんですね。『鹿男あをによし』の「鹿が喋る」というアイディアの原型が万城目さんの学生時代のモンゴルでの体験から生まれたというのは、まさにその好例なのではないかと。
 「きっかけ」とか「題材」っていうのはどこにでも転がっていて、それを活かせるかどうかが、勝負の分かれ目なのかもしれません。でも、これを読んでいると、万城目さんだって、最初から「うまく書けて、評価されていた」わけではないみたいですよね。

 梅田に到着するも、集合時間まで余裕があったので本屋に寄った。自分の本の前に、書店員の方が書いてくれたポップが立っていた。のぞいてみると、
「三分の一までガマン! あとは一気にいけます!」
 と書いてあった。東京ではまずお目にかかることのない、率直すぎるコメントに胸をどきどきさせたのち、私は待ち合わせの店に向かった。

 なんていうのを読むと、ちょっと微笑ましく感じたりもしてしまいますが、このポップすごいよねえ、売る気があるのかないのかよくわからない。「率直」ではあるんだろうけど。大阪では、書店のポップってこんな感じなのでしょうか。

 230ページのそんなに分厚くない本で1200円。かなり「面白い」エッセイ集なのですが、正直、万城目さんと同世代でないとわかりにくいネタが多いので、いま、20代終盤から40歳くらいまでの方が、いちばん「面白がれる」本だと思います。しかし、三浦しをんさんのエッセイを読んでいていつも思うのだけど、最近のエッセイって、明らかに「ターゲットをかなり狭く設定して、その層にしか伝わらないような話をあえて書いている」ものって多いですよね。単に、ボイルドエッグスの戦略?
 万城目さんに興味がある方、気楽に読める面白いエッセイをお探しのヤングアダルト世代の皆様にはオススメできるエッセイ集です。
 文庫になったら、もっと幅広い人たちに「まあ、ちょっと一度読んでみなよ」って言えそうな感じです。

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