- 作者: 多田文明
- 出版社/メーカー: 彩図社
- 発売日: 2005/12/26
- メディア: 文庫
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出版社/著者からの内容紹介
「アンケートにご協力ください」「絵に興味ありますか?」「手相の勉強してるんです」
街を歩いていると、いろいろな勧誘を受ける。悪質なキャッチセールスの噂は知っているから、無視して通りすぎるのが一番。
だけど「本当についていったら、どうなるのか?」という疑問は残る。
本書ではインチキ宗教から怪しい絵の即売会、無料エステ、コーヒー豆の先物取引まで、実際にキャッチセールスの現場に潜入。
本当は気になるけど見にいけない場所のこと、あなただけにお教えします。
確かに、ああいうキャッチセールスって、「ついていったら危ないのはわかりきっているけど、どんなものなのか気になる」ものですよね。
でも、実際に自分で試してみるわけにもいきません。
そういう「善良な一般市民」である我々にとっては、この本を読むことは、ひとつの「代償行為」になるのではないかと思います。
この本、著者が実際にそういうセールスの人たちについていって体験した「潜入ルポ」なのですが、とりあえずひと通り読んで感じるのは、「やっぱりああいうキャッチセールスには『関わらない』のが最大の防御法だな」ということでした。
「声をかけられても、絶対に足を止めない」
それが勧誘の悲劇を生まないための一番の方策である、しかし、それは人間に好奇心がある限り、難しいことかもしれない。
悩みある人には、占い。健康不安のある人には、健康食品。美しくなりたい女性たちには、化粧品やエステなど、興味のあることを囁きかけられれば、誰だって話を聞いてみたくなる。
それでは、足を止めて話を聞いたけれど、彼らを追い返したくなった場合どうすればよいのか? その対処方法として、自分の職業を偽ってみることをお勧めする。
学生、フリーター、求職中と言えばローンを組めないと思って、ものの5分もしないうちに彼らの方から去ってくれるはずである。
この「自分の職業を偽る」というのは、キャッチセールスの人たちの目的を考えれば、たしかに有効な手段だと思われますが、僕が友人・知人から聞いた話などから考えたのは、やはり、「絶対に足を止めない」というのがいちばんの「対策」なのではないかということでした。
いや、この本の著者の多田さんは、場慣れしており、ある程度肝が据わっている方のようなので、この本の中で書かれている範囲では悪質な洗脳を受けたり、命の危険を感じる恐喝まがいのセールスをされたりはしていないようなのですが、実は、「ああいうセールスの連中についていって、バカにしてやろう、正しい理屈で打ち負かしてやろう」なんていう気持ちでついていくのって、けっこう危険なんですよね。ああいうセールスの人たちが持っている「買わせるためのノウハウ」っていうのは恐ろしいくらいの「洗脳力」があります。「頭がいい、あるいは世慣れている自分があんなのに騙されるわけがない」というのは、実は、けっこう無防備な状態なのです。もし契約しないで済んだとしても、一度関わってしまったばかりに、買わないにしてもひっきりなしに宣伝や契約の催促の電話がかかってくるのでは、まさに「割に合わない」ですから。
でも、世の中にはこういうセールスに騙される人ってそれなりにいるんですよね。もし誰も引っかからなかったら、こういう商売が連綿と続いてはいないでしょうし。
僕の職場にも「マンション買いませんか」という電話がいまでもかかってきて、当直中などはただでさえピリピリしているところに、「○○病院の先生から患者さんの紹介のお電話ですが……」ということで電話をまわしてもらったら、「私、××という会社の者で、お得な税金対策としてマンションのご紹介を……」というようなこともけっこうあるのです。そんな迷惑行為をするような人たちから、何千万円もするようなマンションなんて買うわけねーだろ!と思っていたのですが、ある病院で、「ああいう業者から、マンションを買った医者(しかも2部屋も!)」と直接知り合って、愕然としてしまいました。その人は、本当に「優しくて気弱な人」だったので、なおさら居たたまれなくて。ちなみに、そのマンション、バブル崩壊とともに恐ろしいくらい値下がりしたそうなのですが、いまはどうなっていることやら……
本当に「誰がそんなの買うんだ!」と思うけれど、実際に買った人がいる、というのもひとつの事実。
「自分がああいうのにはひっかからないぞ!」と固く決心しているつもりでも、「自分磨きに役立ちそうなこと」には、けっこうみんな脇が甘くなりがちだということは、覚えておいて損はないでしょう。
この本のなかに、
現在、特定商取引法では、エステ・語学教室・学習塾・家庭教師の4業種を「特定継続的役務」と定め、中途解約権を認めているが、結婚相談所はまだである。1日も早く、法整備がなされることを望むものである。
という記載がありますが、この本が出たあとに法改正がなされており、現在は、この4業種に「結婚相談情報」「パソコン教室等」が加えられています。
つまり、これらの業種は、「契約に関するトラブルが多い」ということなのです。
「英会話教室で英語を身につける」というのは、「自分のためになるすばらしい行為」だというイメージを持たれがちなのですが、「英会話を勉強してみたいと思うこと」と「教室に地道に通って英会話の勉強をすること」には、けっこう深い溝があるんですよ。でも、「英会話を学ぶのは正しいこと、良いこと」だという先入観があるから、かなりムリのある金額設定・日程のレッスンチケットを買ってしまったりもするわけです。「正しいことをやっている」と思うからこそ、効果に見合わないはずの高いお金を払うことに疑問を持たないことってけっこう多いのですよね。
キャッチセールスの海を泳がなければならない現代人にとっての「有益な知識」として、一度読んでおいて損はない本だと思います。
ただし、本当に「キケンですから、絶対に著者のマネはしないように」。