『ファミ通』(07/7/20号)に掲載されていた、小島秀夫監督のインタビューより。
小島秀夫:カプコンさんの『戦場の狼』が、当時アーケードで流行っていまして。そういうゲームをMSX2で作ろうと。そういう動きが何年も続いていて、何人もの先輩たちがチャレンジをしてはボツになっていたわけです。そんなものが僕のところに回ってきまして。
浜村通信:あーなるほどなるほど。
小島:正直言って、戦争もののゲームを作りたいとは思わなかったんですね。でも作らないといけない。そのときに考えたのが『大脱走』みたいな”逃げるゲーム”です。武器も何もない状態で、とにかく逃げる。見つかると捕まって、そのエリアにある収容所に入れられる。そこからどうやって逃げるかを考えて、最後に国境を越えたら勝ちというのを作りたかったんです。でも、それを先輩に言うと、「そんな逃げるゲームなんて誰が買うんや」と(笑)。
浜村:なるほど(笑)。
小島:しかも、新人で1本もゲームを完成させていなかったわけですから、誰も協力してくれなくて。そのときは、本当に辞めようと決意しました。それが1986年の年末だったのですが、「辞める!」と言ったら、ある先輩に食事に誘われまして。その席で、「本当は何をやりたい?」と聞かれたので「本当に『大脱走』みたいなものが作りたいです」と話をしたら、年明けに企画書を書いて家まで来いと言われたんです。そこで、簡単な企画書を用意して持っていったら、「こんなゲームは見たことない。僕があいだに入るからがんばりなさい」と。
浜村:へー!
小島:その先輩は、『グラディウス』を作られた偉大な方だったのですが、上司に交渉してくれて、最終的にゴーサインが出ました。
「戦争もののゲームは作りたいと思わなかった」小島監督が作ったからこそ、『メタルギア』のシステムは生まれたのです。もし小島監督が好戦的な人だったら、「逃げるゲーム」なんて考えなかったはず。
しかし、これを作るのを支援してくれた先輩もまた、見る目があったのですね。作品としてはさておき、ゲームという商品としては、「売れそう」には思えないものなあ。
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