琥珀色の戯言

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今朝子の晩ごはん ☆☆☆


今朝子の晩ごはん (ポプラ文庫)

今朝子の晩ごはん (ポプラ文庫)

 夕飯に食べたものを6年間書き続けたホームページの日記から昨年(2007年)1〜6月分を加筆修正して文庫化。テレビの料理番組を見て作ったり、芝居や乗馬、整体の後に総菜屋で買ったり、直木賞作家の日常がつづられる。

 『吉原手引草』で直木賞を受賞された(のは、この文庫に掲載されている時期の直後になるわけですが)松井今朝子さんのブログの日記を書籍化したものです。
 読み始めたときには、「これは、QP(あまりにこの本のなかで頻出するのでこの略語なのですが、マヨネーズで有名な『キューピー』のこと)のサイトかなにかで連載されていた日記なのか?」と思うくらいに「キューピー3分クッキング」のネタが満載なのに驚いたのですが、京都の老舗旅館(料理が美味しいので有名なのだそうです)の娘であり、料理上手な松井さんの日々の夕食のメニューと時事ネタが、かなり丁寧に書かれています。本当に松井さんというのは「妥協しない、キチンとした人」なんだろうなあ。だからこそ、時代考証にこだわりぬいた作品が書けるのでしょう。僕も思わず『吉原手引草』買ってしまいましたよ。この日記を手に取るまでは、全然読む気なかったのに。
 ただ、その一方で、最近の「だらしない大人」のひとりである僕としては、松井さんの「キッパリとした物言い」に対して、「これを読んでいると、なんかずっと小うるさいオバサンに説教されているような感じだなあ……」と辟易してしまったのも事実。

(4月4日の日記より)

 いやー今日は寒かった。花冷えなんてもんじゃない異常気象であります。短距離の電車内ではかならず中吊り広告を物色するのであるが、今日は週刊誌の見出しがどれもこれもパッとせず、目に止まったのは「海外青年協力隊」募集のじみーなポスターだった。
 ああ、私が今二十代なら応募しちゃうのになあ、でも今の若い人は意外と内向きだからこれに殺到するなんてことはないのかも……などと思いつつふと横を見れば「シニア海外ボランティア」募集のポスターがぶら下がっていて対象者はなんと四十〜六十歳。これにはきっとものすごくたくさんの人たちが殺到しそうな今の日本国であります。

 こういう内容がけっこう多いので、これを読んで「うーん、合わないな……」と感じた人は敬遠したほうが無難でしょう。
 あと、競馬フリークとしては、乗馬をされる松井さんが「馬の性格」について語られているのを読むと、「こんな気まぐれで繊細な動物の駆けっこに大金を賭けるなんて無謀だよなあ……」と思いました。「本当に強い馬には馬場状態も展開も関係ない!」なんて言われることもあるのですが、「雨粒が一滴でも顔に当たると、あっという間にやる気がなくなる馬」とかが本当にいるみたい。

 今秋に発売されるらしい続編では、「直木賞を受賞したら、どんなふうに日常が変化するのか?」が書かれているはずで、非常に楽しみです。

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