琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

最後の授業 ぼくの命があるうちに ☆☆☆☆☆


最後の授業 DVD付き版 ぼくの命があるうちに

最後の授業 DVD付き版 ぼくの命があるうちに

最後の授業 ぼくの命があるうちに

最後の授業 ぼくの命があるうちに

内容紹介
全米600万人が涙した、ある大学教授の「最後の授業」

今日の次には明日が来て、その先にも新しい日が待っている。そうやって、当たり前のように人生は続いていく。しかし、これから先もずっと続くと思っていたその人生に「終わりの時」があると知ったとき、あなたは何を考えるだろうか――。

2007年9月18日、ペンシルベニア州ピッツバーグにあるカーネギーメロン大学の講堂で、1人の教授が「最後の授業」を行った。
教授の名前はランディ・パウシュ。46歳。最後の授業をするにはまだ若すぎるパウシュだが、彼にはこのとき、長年親しんだ大学に別れを告げざるをえない事情があった。膵臓から肝臓へと転移したガン細胞。医師から告げられた命の刻限は――「あと3カ月から半年」。
こうしてパウシュの最後の授業は始まった。スクリーンに映し出された演題は『子供のころからの夢を本当に実現するために』。それは、「最後の授業」であると同時に、幼い3人のわが子に遺すためのメッセージだった。

パウシュが幼いころに抱いた夢は、たくさんある。無重力を体験する。NFLの選手になる。ディズニーのイマジニアになる……。そのほとんどは実現し、いくつかは失敗のうちにも自分を成長させる糧となった。パウシュは言う。
「夢を叶える道のりに障害が立ちはだかったとき、僕はいつも自分にこう言い聞かせてきた。レンガの壁は、僕の行く手を阻むためにあるんじゃない。その壁の向こうにある何かを自分がどれほど真剣に望んでいるか、証明するチャンスを与えているんだ」。

両親の教え、家族の愛、同僚たちの支え。そうやって、人は人と関わりながら生きていく。自分の夢を叶え、周りの人が夢を叶える手助けをすることで、明日を生きるエネルギーを手に入れる。
人生の幕切れがそう遠くないと知りながらも、パウシュは自分を「本当に幸せ者だ」と言う。最後の授業は、自分の人生をこんなにも素晴らしいものにしてくれた人々への感謝であふれていた。

講義を終えたパウシュを迎えたのは、講堂を埋めつくした聴衆のスタンディングオベーションだった。全米中のメディアがこの授業について報じ、2500万人以上がテレビ番組でパウシュの姿を目にした。インターネット配信された講義の模様は、600万ものアクセス数を獲得した。

この本は、パウシュの最後の授業の記録であり、「つづき」でもある。講義を行うにいたった経緯、講義では語られなかった家族への想いなど、新たに書き下ろされた部分も多い。
読む者の心に残るのは、「死ぬ」ということではなく、「生きる」ということについての、パウシュの力強いメッセージ。夢を実現することの大切さ、人生の喜びについて、ユーモアあふれる語り口で講堂を沸かせたパウシュの息づかいが、ページをめくるごとに伝わってくる。
DVDには、日本語字幕のついた「最後の授業」が収録されており、笑いと涙で包み込まれた講堂のライブ感が味わえる。

 最初にこの本を手に取ったとき、正直、「よくある命の大切さを訴える感動モノ」だと僕は予想していました。
 でもね、この本は、この人は違ったのです。
 この本に書いてあること、そして、「最後の授業」で彼が語ったのは、「よりよく生きるには、どうすればいいか」ということ、そして、「人は生きているかぎり、変わること、成長していくことができる」ということでした。
 たとえそれが「死の宣告」を受けた後でさえも、人は、「よりよく変わろうとすることができる」のです。

  ランディ・パウシュ教授は、「バーチャルリアリティの第一人者」とされ、コンピューターサイエンス界の世界的権威とされている人物です。
 ところが、この本を読んでみると、学生時代のパウシュ教授は、「才能はあるけど、すごく感じの悪い人」だったということがわかります。

 ブラウン大学に進学したころには、僕はある程度の才能があり、自分でそう思っていることをまわりも知っていた。新入生のころに知り合った親友のスコット・シャーマンは、当時の僕についてこう語る。「まるで機転がきかなくて、会ったばかりの相手にだれよりも早く反論するヤツだと評判だった」
 ブラウン大学で、コンピュータサイエンスの伝説の教授、アンディ・ファン・ダムが僕を助手に採用した。「アンディ・フォン・デマンド」として知られる厳しい教授は、僕を気に入ってくれた。僕はたくさんのことに夢中になっていた――これは長所だ。ただし、僕の強みは欠点でもあった。アンディは僕を、冷静すぎて、無作法すぎて、反論ばかりして柔軟性がなく、いつも自分の意見をまくしたてていると思っていた。
 ある日、アンディに散歩に誘われた。彼は僕の肩に手をまわして言った。
「ランディ・きみがとても傲慢だと思われていることは、実に悲しい。そのせいで、きみが人生で達成できるはずのことが制限されてしまうんだからね」
 いま思うと、彼の言い方は完璧だった。実際は「ランディ、きみはイヤなヤツだ」と言っているのと同じだった。でも彼は僕が批判を受け入れて、憧れの人の言葉に耳を傾けるべきだと思わせるように話してくれた。

(中略)

 最後の授業がインターネットで広まってからというもの、かなりの友人が僕を「聖ランディ」と呼んでからかう。僕がもっと人間くさいあだ名でいろいろ呼ばれていたことを、彼らなりに思いださせてくれる。

 この本を読んでいると、パウシュ教授の若い頃は、たしかに、「優秀なのだけれど、融通が利かなくて協調性に欠ける」人だったのだろうなあ、ということが伝わってきます。
 ところが、「最後の授業」をしているパウシュ教授は、ユーモアにあふれ、学生たちにも厳しさと温かさを併せ持つ人間味あふれる人なんですよね。
 この本で紹介されているさまざまなエピソードを読んでみると、パウシュ教授が、はじめから「聖ランディ」だったわけではなく、さまざまな経験を積み重ねて、いまの地位と人格を築いてきたのだ、ということがよくわかります。
 だからこそ、僕はこの「コンピュータサイエンス界の世界的権威」が、どうやって自分を成長させてきたのか、とても興味深く読むことができたのです。
 パウシュ教授のような「才能」は僕にはないけれど、パウシュ教授が抱えてきた「融通の利かなさ」とか「協調性のなさ」は、僕の中にも確実に存在しているものなので。
 そして、パウシュ教授は、「死」が見えてきた現在でも、「死への準備」ではなく「最後までより良く生きる」ことを求めて、成長しつづけているように僕には感じられました。

 もちろん、パウシュ教授は、「完璧な人間」ではありませんし、この本のなかでも、体調が悪くなってり、夫人や子供たちの将来への不安について触れられています。だからこそ、僕はこの本、そしてパウシュ教授の「生きざま」に惹かれてしまうのです。

 この本、僕は「最後の授業」の内容を書籍化したものだと思い込んでいたのですが、実際は、「最後の授業」の内容と、その後のパウシュ教授へのインタビューの中の言葉から抜粋したものが入り乱れていて、ちょっと時系列がわからなかったりするんですよね。中には、「ビジネス書」のような「ありがちな人生のコツ」みたいなのもけっこう含まれているのですが、それでも僕は、この「本当に人間関係で試行錯誤してきた人間」の言葉は、より多くの人の心に響くはずです。
「夢をかなえる」ことは簡単なことじゃないけれど、

「夢を叶える道のりに障害が立ちはだかったとき、僕はいつも自分にこう言い聞かせてきた。レンガの壁は、僕の行く手を阻むためにあるんじゃない。その壁の向こうにある何かを自分がどれほど真剣に望んでいるか、証明するチャンスを与えているんだ」

たとえやせ我慢でも、こんなふうに言える人生って、素晴らしいと思うんですよ。
「お涙頂戴」な言葉は書かれていないはずなのに、僕はこの本を読み終えたあと、涙が止まりませんでした。
少なくとも、いま、この日本という国で「生きている」僕には、まだ、「よりよく生きる」チャンスはあるはず。

 僕は子供のころの夢についてくり返し語ってきたから、最近は、僕が子供たちにかける夢について訊かれることがある。
 その質問には明確な答えがある。
 親が子供に具体的な夢をもつことは、かなり破壊的な結果をもたらしかねない。僕は大学教授として、自分にまるでふさわしくない専攻を選んだ不幸な新入生をたくさん見てきた。彼らは親の決めた電車に乗らされたのだが、そのままではたいてい衝突事故を招く。
 僕が思う親の仕事とは、子供が人生を楽しめるように励まし、子供が自分の夢を追いかけるように駆り立てることだ。親にできる最善のことは、子供が自分なりに夢を実現する方法を見つけるために、助けてやることだ。
 だから、僕が子供たちに託す夢は簡潔だ。自分の夢を実現する道を見つけてほしい。僕はいなくなるから、きちんと伝えておきたい。僕がきみたちにどんなふうになってほしかったかと、考える必要はないんだよ。きみたちがなりたい人間に、僕はなってほしいのだから。
 たくさんの学生を教えてきてわかったのだが、多くの親が自分の言葉の重みに気がついていない。子供の年齢や自我によっては、母親や父親の何気ない一言が、まるでブルドーザーに突き飛ばされたかのような衝撃を与えるときもある。

(中略)

 僕はただ、子供たちに、情熱をもって自分の道を見つけてほしい。そしてどんな道を選んだとしても、僕がそばにいるかのように感じてほしい。

 僕はDVD無しのほうを買ったのですが、DVD付きのほうを買いなおすつもりです。パウシュ教授の「最後の授業」は、YouTubeで日本語字幕付きのものを観ることができるのですが、ネット上のデータはいつ消えるかわからないところがありますし、いつか、僕の子ども、あるいは次の世代の人たちに見せておきたいので。

 最後に、この「最後の授業」の動画を御紹介しておきます(上から順番に観てください。もしかしたら、こちらからのほうが観やすいかもしれません)。
 不躾な話なんですが、内容はもちろん、「聴いている人を魅了できるプレゼンテーションのやりかた」としても、とても参考になりますよ。


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