琥珀色の戯言

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銀齢の果て ☆☆☆☆


銀齢の果て (新潮文庫)

銀齢の果て (新潮文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
和菓子司の隠居、宇谷九一郎の住む宮脇町でも「老人相互処刑制度」が始まった。町内には、もと自衛官、神父、もとプロレスラー、そして幼なじみなど、「強敵」五十数人が犇めいている!21世紀最大の、禁断の問いをめぐる筒井文学の新たな代表作。

 ああ、なんだか久々に懐かしくも騒々しい「ツツイヤスタカ」が還ってきたなあ、という作品です。
 筒井さん70過ぎてもこういう作品が書けるのだなあ、と驚くのと同時に、ここに書かれているような世界は、これから年老いていく僕にとっては、「笑い話」ではないんですよね。
 「反社会的」で「残酷」な内容なのかもしれませんが、逆に「周囲に厄介者扱いされながら、ギリギリのところで生かされていく」という人生と、この「老人バトルロワイヤル」でのバカバカしくも華々しい死のどちらが「マシ」なのかな、みたいなことをちょっと考えてしまいましたし。
 しかし、こういう作品を書くことができるのも、許されるのも、まさに筒井さんの特権ではないかという気がします。
 若者が書けば、「こういう設定の作品を書く」だけで、大バッシングが巻き起こったでしょうし。
 
 ただ、この作品に、僕はなんとなく筒井さんの「生き残ってしまった悲しみ」みたいなものも感じたのですけどね。
 それでも、「最期の最期まで、目に見えるものを書き続ける」人なんだろうなあ、筒井さんは。
 それは、けっしてラクな生き方じゃないはず。

 赤塚不二夫さんの訃報を耳にして、僕は「ああ、これでまた筒井さんも寂しくなってしまったのではないかな」と思いました。
 まあ、オールドファンとしては、この『銀齢の果て』には、あんまりしんみりせずに、「おおっ、筒井康隆まだまだバリバリの現役だな!」と素直にニヤニヤしていれば良いのです。
 「バトルロワイヤルもの」として、純粋に「面白い小説」であることも間違いないですし。

 ところで、この『銀齢の果て』を読んでいると、なぜか『俗物図鑑』を思い出すんですよね、なぜだろう……

俗物図鑑 (新潮文庫)

俗物図鑑 (新潮文庫)

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