琥珀色の戯言

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荒野 ☆☆☆☆


荒野

荒野

■内容紹介■
山野内荒野、12歳。恋愛小説家の父と暮らす少女に、新しい家族がやってきた。“恋”とは、“好き”とは? 感動の直木賞受賞第一作

 30代後半の僕にとっては、読んでいてなんだか気恥ずかしくなってしまうような「女の子の本」でした。
 12歳、中学校に入学したばかりの山野内荒野、大人になること、女になることに対して頑なに拒絶反応を示していた彼女が少しずつ変わっていく姿を桜庭さんは淡々と、かつ精緻に描いていきます。
 僕は女の子だったことがないので、これが本当に「リアル」なのかどうかはわからないのですが、この本を読んでいると、女の子の「思春期」ってこんな感じなのかな、と納得させられてしまうんですよね。
 桜庭さんのすごいところは、この500ページを超えるけっこう長い小説を、「突然の家族の死」とか「恋人の難病」とかいうような「飛び道具」に頼らずに書き切っているところだと思います。読み終えて、「じゃあ、この物語のなかで、山野内荒野とう少女そのものに、なにかすごく劇的なイベントが起こったのか?」と考えてみると、本当に「何もたいしたことは起こっていない」のですよね(「山野内家」は、お父さんのおかげで波乱万丈な家ではあるとしても)。そんな日常の積み重ねをこんな「作品」にしてしまうんだから、やっぱり桜庭さんはすごいよなあ。
 基本的には、「女の子」のための小説なのではないかと思うのだけど、もしかしたら、同世代の女の子は、「こんなのガキっぽい」とか感じていて、『ツ、イ、ラ、ク』のほうが「リアル」だったりするのだろうか……


ツ、イ、ラ、ク (角川文庫)

ツ、イ、ラ、ク (角川文庫)

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